成人の歯の本数は全部で28本だが、70代前半になると10本以上の歯を失い、平均17本となる。
一般に3本歯を失うと、咀嚼能力は低下し、4本失うと顔が歪むといわれている。
それだけではない。噛めないと認知症になりやすいのだ。厚労省研究班の調査によると、歯がほとんどなく義歯未使用の人は、認知症リスクがそうでない人に比べて約2倍になるという。
「歯を失ったからといっても心配することはありません。義歯を使用して正しく噛めれば、20本歯が残っている人と同じように健康を維持できます」
こう話すのは、河原英雄・歯科河原英雄医院院長だ。河原院長の患者には、義歯装着で噛む機能を回復した結果、元気になった高齢者が何人もいる。
たとえば、脳梗塞の後遺症で噛めずに寝たきり状態だった80代の男性は、噛めるようになったことで4か月後には一人で歩けるようになった。
胃ろうをつけ、話すこともできなかった78歳の女性は、噛めるようになって胃ろうを外すことができた。
※週刊ポスト2013年6月21日号