度重なる悪質な万引きへの対策のため、大阪の鮮魚店が万引き犯の顔写真を店頭に貼りだした。店内にはこんな貼り紙がしてある。
<当店で万引き等の行為を発見・確認した場合、警察には通報せず、犯人の顔写真を撮影し店頭に貼らせていただきます(無期限)>
<万引き行為を発見・お知らせいただくだけで1万円!万引き犯の罰金(1商品につき現金1万円)をそのままお渡しいたします>
一部では、人権に配慮欠く行為だという意見もあるが、どうなのだろうか。人権問題に詳しい弁護士の伊東秀子さんが語る。
「通常、警察に逮捕されると新聞やテレビで顔写真や名前が報道されることがあります。犯罪を犯すとある程度、人権が制限されることは社会的に許容されており、店が写真を貼ること自体が違法とはいえません。罰金も民事上の損害賠償金にあたると考えられ、罰金を請求したからといって即違法とはなりません」
写真を無期限に貼り続けることや1万円という金額が妥当かどうかの問題は残るが、原則として店主の対応に違法性はないとの見解だ。
「万引きは立派な犯罪であり、人のモノを盗んではいけないことが大前提。そこをないがしろにして鮮魚店を非難するのは本末転倒です」(伊東弁護士)
一方、評論家の樋口恵子さんは「社会常識として行きすぎ」との立場だ。
「一生懸命働いている鮮魚店の店主に同情しますし、万引きを憎むべきですが、法律が裁く前に店主が罰してはいけません。これではリンチです。万引き行為は警察や司法に委ねるべきです」
こんな私刑が拡大すると、高齢者の人権侵害につながると樋口さんは指摘する。
「万引きを店が独自に罰することを許すと、世の中がギクシャクします。特に高齢者はちょっと気を抜くと商品を持ってぼーっと歩いてレジを通り越してしまう。これが即、万引きとみなされると、高齢者の写真が店内にずらっと並ぶことになります。実際に私は買い物中に売り場とレジが遠いと“万引きと間違われないか”とヒヤヒヤしてますよ」
※女性セブン2013年6月27日号