スマートフォンの所有率が飛躍的に増加するにつれ、ユーザーの低年齢化も顕著になっている。
内閣府が3月に発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査(平成24年)」では、携帯電話を持っていると答えた子供のうち、スマホを使っていると答えた中学生は25.3%、高校生にもなると55.9%に増える。昨年の同調査ではそれぞれ5.4%、7.2%だったことを見れば、この1年でいかにスマホが普及したかがうかがえる。
さらに驚くのは、昨年の同調査では0%だった小学生のスマホユーザーが、今年は7.6%もいたことだ。小学校低学年の子供を持つ都内在住の主婦(38)がいう。
「ウチの子供は幼稚園の頃から私の使っていたスマホを器用に使いこなし、無料ゲームのアプリはホーム画面から自分で探して遊ぶほど。そのほか、写真を撮ったり天気予報アプリを毎日チェックしたり……。小学校に入ってからは自分専用のスマホが欲しいとねだられて困っているんです」
そうかといって、小学生にスマホを持たせてインターネットやSNS、アプリを自由に使わせるには、何重にもフィルタリング(有害サイトアクセス制限)をかける必要が出てくる。そんな親たちの悩みを汲み取って市場を伸ばしているのが、玩具業界である。
6月15日から東京ビッグサイト(江東区)で開かれる「東京おもちゃショー2013」(東京ビッグサイト)。一般公開に先立ち行われた商談会では、小学生をターゲットにした“スマホ型おもちゃ”が注目の的となっていた。
おもちゃとはいえ、決して子供だましの商品ではない。セガトイズが7月26日に発売するのは、写真画像の加工やスタンプ機能、メールの送受信、音楽の取り込みまでできる「ジュエルポッドダイアモンド プレミアム」(9240円)。タッチパネル式でピンチアウトで拡大表示もできる本格派だ。
「このシリーズは2010年から発売していて、累計で80万個販売しました。今回はより本物のスマホに近付けた商品。アプリを充実させた『JSポッド(プレミアム)』も同時発売するので、これまで以上にJS(女子小学生)の必須アイテムになってくれたらと思っています」(セガトイズ国内事業部の担当者)
国内で4500万人を超えるユーザーから支持される「LINE」に目をつけ、8月に“LINEごっこ”ができる専用玩具(LINE TOWN MYTOUCH=ラインタウン マイタッチ/6825円)を発売するのは、タカラトミーだ。
「友達と本体同士を接触させることで、メッセージが送れたり、本家LINEと同じキャラクタースタンプが交換できたりします。そのほかミニゲームやコミュニケーション機能も充実しています。年度内に少なくても10万個の販売目標を立てています」(タカラトミー国内事業統括本部の担当者)
タカラトミーは5月からLINEのオリジナルキャラクターをさまざまな玩具に展開させる事業を強化しており、グループ全体で国内年間市場規模50億円を目指すと鼻息も荒い。
そして、スマホ型玩具のタブレット版も登場した。メガハウスが7月下旬に発売を予定している「Tapme(タッピミー)」(2万790円)は、もはや玩具の範疇を超えている。Wi-Fiを使ったインターネットメール、知育、ゲーム、アニメ、電子書籍(絵本やマンガ)、音楽配信、カメラ。ここまで機能が充実していたら、子供に本物のタブレットを買い与えるのと変わらない。
子供の憧れが増幅すればするほど、進化を遂げるスマホ型おもちゃ。日本玩具業界によれば、こうした「ハイテク系トレンドトイ」の市場は、おもちゃ業界全体が厳しい環境に置かれる中にあって、前年比107.4%の伸びを示しているという。
だが、商談に来ていた雑貨店の店主(53)は、こんな寂しさも口にする。
「テレビゲームやスマホの普及で、それに連動した玩具が売れるのは当然のこと。でも、昔ながらの金属玩具や着せ替え人形、ブロックや木製のおもちゃなど、“これぞ玩具”という商品がいまいち盛り上がっていないのは残念ですね」
携帯電話のキャリアと同じく、おもちゃ業界も限られた画面内でいかに“魅力的な遊び”を提供できるかのコンテンツ争いに入っている。