北朝鮮からと見られるサイバーテロで韓国の銀行やテレビ局のシステムが一斉にダウンした事件は記憶に新しい。日本に対しても、2011年には複数の防衛・原子力関連企業にサイバー攻撃が仕掛けられた。陸上自衛隊でシステム防護隊初代隊長を務めた伊東寛氏が北朝鮮のサイバー部隊について解説する。
* * *
サイバー空間は陸・海・空・宇宙に次ぐ「第5の戦場」となった。コンピュータネットワークをサイバー攻撃で”奇襲”し、国家や軍の指揮通信システムを破壊すれば、相手は大混乱に陥る。その隙に乗じて武力攻撃を加えれば、戦闘を圧倒的に有利に進められるからだ。
中国は1990年代後半からサイバー戦に着目し、2000年代には人民解放軍総参謀部にサイバー部隊を設置した。また民間の大学や情報関連企業には「サイバー民兵」がおり、普段はそれぞれの仕事をするが、有事には軍の統制下に入り“参戦”する。軍と民間を合わせたサイバー要員は40万人に達するという情報もある。
中国の人民解放軍は、無線電波の傍受や妨害を行なう「電子戦」と、ネットワークを攻撃対象とする「サイバー戦」を組み合わせた「電網一体戦」をドクトリン(国の特性に見合った戦い方=原則)としているようだ。
北朝鮮は小・中・高の各年代で優秀な生徒を選抜してサイバー技術のエリート教育を施している。脱北者の証言によれば、こうした“サイバー戦士”は国内外に1000~2000人程度いて、毎年100人ほどの新たなプロフェッショナルが生まれているという。
※SAPIO2013年7月号