収穫シーズンを迎えた梅干しは天然のサプリメントといえるほど、健康に良い。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が夏バテ防止に、梅干しの効用を紹介する。
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「梅雨」のはずだ。今年の関東地方は観測史上3番目の早さ、5月29日に梅雨入りした……が、その後、雨があまり降っていない。
一方、収穫シーズンを迎えた「梅」はと言えば不作だった昨年とは異なり、着果もよく順調な収穫が見込まれている。「紀州南高梅」でも知られる和歌山県は昨年の不作から一転、豊作が期待されている。和歌山市は、2012年の総務省家計調査(総世帯)において、梅干しの消費額でも3010円と全国唯一の3000円台。堂々たるNo.1だ。
和歌山には梅干しにまつわる地元の名物料理も多く、定番の「梅ごはん」のほかにも、裏ごしした梅干しに砂糖を加えて煮込んだ「うめびしお」、さらにはさまざまな料理のアクセントや隠し味にも梅干しは使われる。
ちなみに梅干しの消費額で和歌山市に続く2位は佐賀市の2364円、3位は奈良市の2280円。ベスト3のみが2000円台以上となっており、4位以下は1000円台以下となっている。不思議なことに最下位は2位の佐賀市と同じく九州は宮崎市の459円。佐賀市は九州唯一の4ケタとなる額の消費自治体でもある。
これが梅の収穫量となると1位の和歌山は変わらないが、2位に群馬、3位に山梨、4位に青森と消費購入額との関連が薄くなる。とりわけ山梨の甲府市は699円と“輸出超過”状態となっている。
クエン酸が豊富に含まれていて、エネルギー代謝を活発にしてくれる──。つまり太りにくく、疲労回復効果も期待できる梅干し。また肉などの酸性食品を過剰に摂取してしまった時に血液を弱アルカリ性に保つことができるのだとか。さらに殺菌、解毒、老化予防、整腸作用、血糖コントロール、高脂血症・高血圧・動脈硬化予防効果など、すさまじく広範囲でパワーを発揮している。まさに天然のサプリメントの趣だ。
昔から「風邪をひいたら焼き梅」などと言われてきましたが、近年になって焼き梅には「ムメフラール」という物質が生まれ、インフルエンザの予防効果なども期待できるという。
ところで、梅干しを使った料理で1年365日いつでもおいしくいただけるのが、梅干しの吸い物。水からゆっくりとひいた昆布出汁に、多めの鰹節で出汁を引き、梅干し、みりん、しょう油を入れ、火にかけて数分──。これからの暑くなる時期なら来客を迎える際に冷やして供してもいいし、寒くなってきたらあたたかくしてもいい。食前、食間、食後だけでなく、酒前、酒間、酒後にもうってつけの一椀である。
焼酎のお湯割りのように酒に入れてよし、酒が抜けてから体に入れてもよし。小さなひと粒の梅は、凝縮されたエネルギーに満ちている。