学校にも行かず、働かず、働くための準備もしない若者のことを「ニート」と呼ぶようになって10年以上が経つ。働かない、働けない子供を抱えた悩む親たちも増えている。
6月5日に放送されたNHKの朝の情報番組『あさイチ』でも『働かない、働けない子どもの親』がテーマに取り上げられ、視聴者から「実は私も悩んでいる」という声が殺到した。
「子供が無事に大学に入学したので、親としてはひと安心」
と思っている人にとっても、決して他人事ではない。中学教員のBさん(56)が告白する。
「長男は真面目な性格で、きちんと勉強してそこそこ有名な大学に合格。就職活動も一生懸命やっていた。ところがエントリーシートを50社に出し、30社で面接にこぎつけたものの、内定はゼロ。真面目なだけに落ち込みは激しく、すべてにおいて自信をなくしてしまった。
家にこもるようになり、自殺をほのめかすような発言までするようになったため、家内がつきっきりになっていたが、その家内が若年性アルツハイマーになり、施設に入ることに。息子はそれを自分のせいだと思い、ますます精神が不安定になっている。数年前まで息子の将来は安泰だと思っていたのに、私にはもう、どうすればいいのかわからない」
せっかく得た就職先に馴染めず、心を病んで退職。再就職する気力を失い、ずっと働かずに家にいる、というケースもある。
まさに一寸先は闇。子供が大学入学や就職しても、安心できない世の中なのである。女の子の場合、結婚に失敗して実家に戻り、引きこもりになってしまうケースもある。
「結婚して幸せになってくれればと思い、娘には『大学を卒業しても、無理に就職しなくていいから』といっていた。結局、娘は一度も就職しないまま家事手伝いになった。30歳でようやく結婚したが、『夫の給料が安くて、実家生活ほどの贅沢ができない』といって1年で離婚してしまった。
その後は働きに出るわけでも、婚活をするわけでもなく、家で韓流ドラマを見てゴロゴロしている。娘はもう35歳。このまま再婚もせずに一生親元にいるのかと思うと、将来が不安でたまらなくなる」(会社経営者・67歳)
自分がまだ若ければ、「子供の面倒はオレがみる」と頑張って働く気力もわくかもしれない。だが、老境にさしかかると、自らの健康にも生活資金にも不安のほうが先に立ってしまう。
※週刊ポスト2013年6月28日号