がん治療に関わる費用(入院、手術、薬代など)は莫大な出費を覚悟しなければならないと思われているが、実際の自己負担額は少なくて済む場合も多い。
がんの治療費用を部位別、症状別にシミュレーションできるサイト『がん治療費.com』が試算した、「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「肝臓がん」「乳がん」における一般的な自己負担額と治療方法を見てみよう。
【肺がん=39万円】
●放射線化学療法を選んだ場合(小細胞肺がん、2年目以降は6万円)
平成5年以降、胃がんを抜いて日本人男性のかかるがんのうちの死因トップ。早期発見が難しく、なかなか完治できないとされる。放射線治療と抗がん剤を組み合わせた放射線化学療法が一般的。平均入院日数は21.7日。5年後生存率は小細胞がんの場合17.8%と、かなり低い。
【胃がん=11万円】
●腹腔鏡手術を選んだ場合(2年目以降は3万円)
早期に発見されたがんの場合には、腹部に4か所ほどの穴を開けて行う腹腔鏡手術が一般的。5年後生存率は70.4%で、早期発見できれば90%を超える。平均入院日数は17.5日。ほとんどの胃がんは公的保険の範囲内で治療できるとされ、患者の自己負担は少ない。
【乳がん=計99万円】
●温存手術・術後再発予防治療を選んだ場合
治療法は原則的に切除手術。現在ではできる限り切除範囲を小さくする「温存手術」が主流に。手術後は再発予防のため、5~10年にもわたるホルモン治療を行うケースも多く、完治には長い年月が必要となる。5年後生存率は90%と5大がんの中でトップ。平均入院日数は11.8日。
【肝臓がん=15万円】
●ラジオ波焼灼療法を選んだ場合(2年目以降は毎年6万円)
がんが発見されたときは、すで手術できない状態になっている場合が多い。がんに電極を刺して壊死させるラジオ波焼灼療法、エタノールを注入して壊死させるエタノール注入療法が一般的。重い場合は生体肝移植も。平均入院日数は18.6日。5年後生存率は32.1%。
【大腸がん=12万円】
●切除手術を選んだ場合(結腸がん、2年目以降は4万円)
5年後生存率は73.4%と比較的高い。治療方法は切除手術が中心。早期の場合、自覚症状はほぼないが、発見し治療すれば、ほとんどの場合完治するとも。早期がんの場合、内視鏡などを使用した日帰り手術を行ってくれる医療機関もある。平均入院日数は17.5日。
※金額は「がん治療費.com」による概算値。各がんにおける一般的な治療方法をもとに、公的保険による3割負担、高額療養費制度を活用した算出額。金額は治療開始1年目の自己負担額。乳がんについては長期の治療が必要なため、治療開始から5年分の自己負担額。平均入院日数は厚生労働省『患者調査2011』より。5年後生存率は全国がん(成人病)センター協議会調べ
※週刊ポスト2013年6月28日号