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「肉じゃが食べたいと言う男は小林麻央好き」説唱えるエッセイ

【書評】『ごはんぐるり』西加奈子/NHK出版/1260円
【評者】柳亜紀(弁護士)

 某グルメ雑誌編集者が「大阪特集でのお店選びは大変」とボヤいていたことがある。実際にお店で食べておいしくないと読者から編集部に電話が入るのだとか。わかる。でも単なるクレーマーやと思わんといてほしい! とナニワ出身の私は声を大にして言いたい。

 大阪人は食に対して真剣やねんもん。飲食店で隣に座ったアカの他人には「これウマいですよ~」と自分の注文した料理をつい勧めるし、おっちゃんなら店を出るとき、「ごっそーさん」に加えてさらに「おいしかったで! おおきに!」と声をかけるのは当たり前やし。

 食エッセイというのに、早食い、箸の持ち方はヘタ、コーヒーはブラックではなく珈琲牛乳が好き、という非グルメっぷりの著者。でも、小説の食べ物の描写にうっとりし、ビールのおいしさに「お前まじですごいな」と感動し、いつも「ごはん」でワクワクする。これこそ大阪人の正しい姿やん!

 大阪のおばちゃんが必ず携帯する「アメちゃん」に絶妙なセレクションがあることを語り、東京モンに「たこ焼きってやっぱり好きなの?」と聞かれても、あまりにベタすぎて「大好きやねん!」と答えられない複雑なテレも代弁。ナニワ出身の琴線に触れまくる箇所多数。

 特に食をめぐる「正解」を考察するシリーズが秀逸だ。初デートで行くべきお店は? と著者は自分の中の正解をあれこれ考える。焼き肉は急すぎやし、気取りすぎの店もイヤ。正解は「お好み焼きか焼き鳥屋」や!

 居酒屋でのオーダーの正解は? いくらおいしくても唐揚げやコロッケはちゃうし。「そら豆の天ぷら」や、お酒が進んだ後の「レンコンのピクルス」が正解! そう言いつつ、正解すぎるお店選びやオーダーができる男性を「どんだけやねん!」と警戒するあたりも大阪人っぽくて笑える。

「得意料理の正解」の項で「肉じゃが食べたい」という男はきっと小林麻央好きでムカつく、という意見には激しく同意! この「正解」遊び、ハマります、ほんまに。

 ときに「べさべさに伸びて、汁気がなくなった麺類」が好きという著者に「それはあかん!」と突っ込めば、まるで地元の友達とアホな話で盛り上がってる気分。温かさと笑いと「ごはん」への愛が詰まったエッセイ、やっぱ好きやねん!

※女性セブン2013年6月27日号

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