乳がんが発覚した『エクソシストとの対話』(小学館)などの著書があるノンフィクション作家の島村菜津さん(49才)は2011年、全胸摘出手術、そして再建手術を受けた。執刀医は、聖路加国際病院乳腺外科部長・山内英子さん。助手の尹玲花さん、それに看護師たち、麻酔医もみんな女性だった。そんな島村さんが、手術にかかった医療費について語る。
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欠点のない人がいないように、医師たちも、設備も文句なしの聖路加国際病院にも、弱点はあった。
団体部屋がなく、個室だけなのだ。そしてその差額ベッド代は1日3万円! 最終日は、朝、退院しても1日分請求された。入院や検診で57万円を超えたが、半年後、高額療養費制度で15万円が戻った。
だが、「公」よりありがたかったのは、予想に反して民間の保険だった。
心配性の父が、病気などしないと高をくくっていた私を説得し、強引に入らせた2つの保険会社から、ぽんと100万円と135万円が出た。これぞ、三大疾病の威力!などと書くと、私が焼け太りしたように思うかもしれないが、そうは問屋がおろさなかった。
乳房再建は、全額自己負担。両脇へのエキスパンダー挿入で21万円。半年以上の通院と再建手術まですべて合わせて111万3000円!
2006年4月から、腹部や背中の自家組織を使う再建のみ健康保険適用になり、30万~40万円ほどで済むが、“人工乳房”には、まだ保険がきかない(現在、一部シリコンの保険適用を厚労省が検討中)。そのうえ、乳頭再建手術は別額で20万円ほど。
結局、手術前の検査費用も合わせると再建には二百数十万円がかかり、わずかな蓄えを残し、あぶく銭は右から左に消えた。
※女性セブン2013年6月27日号