「浮気は男の甲斐性」なんて言葉がいまだに幅をきかせ、なかには「夫が浮気したから、お灸を据えてやった」と笑って話す妻もいる。とかく男の浮気は許されている人が多い。
それなのに、一方の男性はというと、女性の不倫は許せない。仮に自分が浮気をしていても、だ。過熱する矢口バッシングの一因はここにもありそうだ。
単なる男の身勝手とも思えるが、実は“遺伝子レベル”で考えると、自然なことなのだという。早稲田大学国際教養学部教授の森川友義さんの解説。
「女性にとっては、生まれた子供は100%、自分の子供だという確証がありますよね。つまり、ママ’s baby。でも、男の場合は、その子が自分の子だという100%の確証はありません。パパ’s maybe(たぶん)なんです。だから、妻がほかの男性の子を産むという可能性もある。それを知らずに、自分の経済的資源を一生投資していたら、次世代に受け継がれるのはほかの男の遺伝子で、自分の遺伝子ではないわけですから、最悪でしょう」
だから、自分の妻の不倫は忌み嫌うというわけだ。それはそうかもしれないが、でも、自分とは直接関係のないほかの女性の不倫にも、強い嫌悪感を抱くのはなぜだろう。
「『女性は貞叔であるべき』という固定観念は、薄らいではいっても、男性の中で決してなくなりはしませんから」
そう話す夫婦問題研究家の岡野あつこさんは、ことが発覚したとき、より裏切られたと感じるのは、男性のほうだと分析する。
「しっかりと仕事をしていて、“おれはこれだけ稼いで、これだけ家族を守っているんだ”という自負がある男性、妻の誕生日にはプレゼントを欠かさないような人ほど、浮気されると愕然として、傷つきます」
そこには、これだけやってきたのになぜ、という思いがあるようだ。でもそれが、妻には全く伝わっていないことも。
「妻の側からすれば、収入やモノよりも、自分のために時間をつくってくれたり、優しい言葉をかけてくれたり“自分が大切にされている”という実感が欲しいんですよね。だから、大したことのない不倫相手にも、優しい言葉をかけられると嬉しくなってしまう。そこが食い違っているんです」(岡野さん)
妻の不倫が発覚したときの男性の振る舞いは、時に我を忘れたものになるという。浮気調査を多く扱ってきた探偵社の調査員はこう話す。
「男性から『妻が不倫をしているかも』と調査依頼を受けて調査し、証拠が得られますよね。その証拠となるものを見せると、ほとんどの男性が泣き崩れてしまいます。やはり疑ってはいても、どこかで信じているんでしょうね。妻のことが許せず、離婚に至るケースがほとんどです」
※女性セブン2013年6月27日号