有名家電量販店などで売られる激安商品を買って、それをネットなどで定価に近い金額で転売し、利ざやを得ている集団。彼らは『転売』と『バイヤー(買い手)』をかけて“転売ヤー”と呼ばれている。
日本にも多くいる中国人転売ヤーの正体は、中小の貿易商社や輸入・輸出雑貨店が中心だという。買い手を集める方法は、中国語のインターネット掲示板や微信(中国版LINE)などのスマホアプリが中心。日本に来ている留学生などがそれに応募して、バイトとして並ぶのである。
転売ヤー経験のある中国国籍の男性がいう。
「掲示板でもそのままの表現はしないね。隠語がある。親(転売ヤー)は『神医(神の医者)』、買い出しバイトを『小護士(看護師)』と、まるで病院の仕事のように表現してるんだ。バイト代は前日の深夜から並ぶ場合は7000~1万円。タイムセールのように2、3時間の拘束であれば3000~5000円程度だね」
商品の大半はネットオークションなどを介して中国で転売される。中でもiPadなどのApple製品や最新ゲーム機は特に人気。中国大陸で不足がちなので、飛ぶように売れるという。
「任天堂やソニーの最新ゲーム機は、一時的に定価の3倍や5倍になることもザラ。中国は日本よりも発売日が後なので、早く手に入れたい人は高額でも買うからね。新商品発売時期になれば、100人単位の『小護士』を導入し、スピードが大事なので買った商品をワンボックスカーに詰めて成田空港に直行するんだ」(前出・中国人男性)
そうした組織による転売以外に、個人でやっているケースも増えている。シャネルなど全身ブランド物で固めた中国人女性は、24歳の留学生ながら「大きなビジネスですよ」と豪語する。
「都心の家電量販店のタイムセールに週3回通っています。中国で売られている日本の家電製品は、同機種でも日本よりも2、3割高い。日本の定価に送料を上乗せしても、“安い”と売れるんです。最近は円安傾向なので買い手は増える一方。私、このビジネスだけで年収800万円です」
※週刊ポスト2013年6月28日号