韓国では今も「世界がK-POPに魅了されている」と大騒ぎしているが、ブームはすでに去った。もともとJ-POPの真似をして一世を風靡したK-POPの春が終焉したのだと、ジャーナリストの青木英一氏は語る。
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K-POPブームの低迷は数字に表われている。
2012年、日本でデビューしたK-POPタレントは、本国でも人気がある女性シンガー・IU(アイユー)、男性アイドルグループ2AM(ツーエーエム)など9組。前年の15組から大きく減った。そして何より新規デビュー組の売り上げ成績は一向に振るわない。
「オリコン年間新人ランキング・トップ10」によると、11年は新人シングル部門で5曲(5位・7位・8位・9位・10位)、アルバム部門では男性アイドルグループBEASTの1位を筆頭に計6枚(2位・4位・5位・7位・9位)がランクインするなど、文字通り日本の音楽業界を席巻する勢いだった。
しかし昨年は、シングル3曲(5位・9位・10位)とアルバム1枚(9位)がランク入りしただけ。上位にも食い込めておらず、日本進出の勢いは急速に落ちている。韓国の芸能プロ幹部はこう分析する。
「本国で非常に人気のあるIUはバラードが持ち味。それでも彼女が日本で目立たないのは、歌唱力に優れた日本人歌手がすでにたくさんいるから。日本のメディアがあえて韓国人歌手に食指を伸ばす理由はないのです。
ダンスグループにしても、その実力にはバラつきがある。日本のファンは『東方神起』や『BIGBANG』などレベルの高いパフォーマンスに目が慣れてしまった。もう“韓流”というだけで売れる時代ではなくなったのです」
先発組の人気は健在だ。KARAは今年1月の日本ゴールドディスク大賞で2年連続の「ベスト・エイジアン・アーティスト」に選ばれ、アジア部門で3冠に輝いた。同じく少女時代は4月に2度目の日本ツアーを終え、全国で約20万人を動員。東方神起(2005年日本デビュー)も昨年の日本ツアーで55万人を動員した。
ただしキー局の歌番組関係者はこう言う。
「K-POPアイドルでは視聴率が取れなくなってきた。むしろきゃりーぱみゅぱみゅなどのほうが数字につながる」
K-POPの定番でもある男性ユニット、女性ユニットによる歌とダンスのパフォーマンスは、日本に昔からあるスタイルであり、韓流の目新しさがなくなれば、所詮は二番煎じに見えてしまう。
●青木英一(あおき えいいち)1972年東京都生まれ。大学を卒業後、国際情報誌の記者を経て独立。朝鮮半島問題、経済事件などをフォローしている。
※SAPIO2013年7月号