「憧れの俳優のベニチオ・デル・トロにすごく会いたかったけど、会えなかったんですよ」──、そう語るのは、出演作『そして父になる』のカンヌ国際映画祭出品で現地を訪れた真木よう子。カンヌでやり残したことがあったようだ。上映では初のスタンディングオベーションに酔い、作品は審査員賞を受賞する快挙だったというのに。
そんな彼女が「カンヌ以上に緊張している」のが、7年ぶりの主演作『さよなら渓谷』の公開(6月22日)だ。高校時代にレイプされた相手と夫婦として暮らす、という壮絶にして複雑な心理状況を演じ切った。
「精神的に過酷なシーンが多くて、撮影中は物を食べるのも辛くなりました。軽くはできないし、やっぱりそれぐらいの精神状態にもっていかなければならなかったし、自分でも気づかないうちに役に近づいていたんだなと思います。
なんとか真木よう子に戻る努力はしていたんですけど、体がついていけなくて。でも周りで支えてくれるスタッフの皆さんのおかげで乗り切ることができました」(真木)
誠心誠意、全力を出し切った作品は、6月20日からのモスクワ国際映画祭に出品される。夢は? 「いいません(笑い)。今やるべきことを一所懸命やって、後につながっていけばいいと思っています」。女優・真木よう子の名が世界に広まる一歩となるか。
※週刊ポスト2013年6月28日号