ファミリーマートが男性向け洋菓子シリーズ「俺のスイーツ」を2年ぶりに復活させるなど、専門店顔負けの味と品揃えで人気のコンビニスイーツ。その市場規模は2012年で1768億円もある(市場調査会社の富士経済調べ)。
中でも、昨年からチルド売り場で存在感を増しているのが、ぜんざい、だんご、どら焼き、わらびもち、大福といった和菓子スイーツである。もともとはセブン―イレブンが2004に市場を開拓し、2009年に「七色茶屋」シリーズを売り出したことから、他チェーンもこぞって和菓子の専門ブランドを立ち上げるようになった(以下、主要ブランド名)。
■セブン―イレブン/7&i
団子のたれや大福のあんこなどに国産素材を使うなど味にこだわり
■ローソン/Uchi Cafe SWEETS あんこや
四季折々の厳選素材を甘さ控えめに仕上げた和スイーツ
■ファミリーマート/Sweets+和
「冷やしておいしい」「生素材を使用」がコンセプト
■サークルK・サンクス/Cherie Dolce~和ごころ~
洋菓子のノウハウを和菓子に取り入れた和洋折衷デザート
ここ1、2年で一気にチルド和菓子が台頭してきた背景を探ってみると、コンビニの目覚ましい技術革新の跡がうかがえる。富士経済・東京マーケティング本部研究員の舩瀨(ふなせ)三和さんが解説する。
「これまでチルド和菓子といえば、冷たくすると硬くなってしまったり、製造当日の消費期限で廃棄ロスがあったりと、なかなか売りづらかったカテゴリーでした。しかし、物流技術の向上などにより、鮮度や品質を保ちつつ、消費期限を3~5日程度に延ばすことが可能になりました」
チルド技術の進歩により、常温で売っているドライ和菓子とは異なる商品訴求もできるようになったという。
「常温の和菓子は日持ちさせるために砂糖をたくさん使用しますが、チルドにすることで砂糖を抑えることができます。低カロリーでヘルシーな和スイーツとして売り出すことで、特に女性客の心を掴んでいます」(前出・舩瀨さん)
さらに、サークルK・サンクスがコンセプトに掲げるように、洋菓子テイストを和に取り入れることで、シニア層のファンも広がっている。
「どら焼きの中に純生クリームを入れたり、ぜんざいの上にフレッシュなフルーツを乗せたりすることで、古臭い和菓子のイメージが一変しました。見た目もケーキやプリンなど洋風でオシャレなスイーツと変わらないので、40代以上の女性や『私は年寄りじゃない』と和菓子に手が伸びなかったアクティブシニア層の取り込みにも成功しています」(舩瀨さん)
しかし、そんな和スイーツのコンビニ売り上げが伸びれば伸びるほど、市場を侵食されているのが、昔ながらの甘味処だ。店舗数は2006年から前年割れが続き、外国人が多く訪れる観光地や名店以外は売り上げ減に喘いでいるという。
スイーツに限らず、多くの食品カテゴリーで専門店を脅かし続けるコンビニ。近くて便利なコンビニで「斬新な味」を持ち帰るのもいいが、たまには足を伸ばして「伝統的な味」に舌鼓を打つ機会は失いたくない。