人間は1日に何万回も瞬きをする。この瞼の動きを担うのが、上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という薄い筋肉と、それを瞼の先端組織に繋ぐ挙筋腱膜だ。
眼瞼下垂(がんけんかすい)は瞼がうまく上がらず、瞳孔を覆うために視野が狭くなる病気だ。上眼瞼挙筋が無かったり弱いことなどが原因の先天性眼瞼下垂や重症筋無力症や神経疾患など他の疾病が原因で起こる場合もあるが、増えているのが加齢やコンタクトレンズ長期使用による後天性眼瞼下垂だ。
慶應義塾大学医学部付属病院形成外科の清水雄介医師に話を聞いた。
「年をとると顔が弛むのと同じように、瞼が垂れ下がり目に重さを感じるようになります。瞼を上げることが困難なので無意識に前頭筋(額の筋肉)を使い、瞼を上げようとするため、眉毛の位置が上がり、額にしわがよります。これだけなら加齢性の変化ですが、瞼が瞳孔を覆って視野が狭まり仕事や運転など、日常生活にも不便を感じるようになれば眼瞼下垂といえます」
眼瞼下垂は20代から始まり40代で増え、60代ではほとんどの人が、目に加齢性の変化を感じる。目と眉毛の間の皮膚が弛んで皮膚があまり、それがまつげの上に乗るために目が重く感じられたり瞼を上げる上眼瞼挙筋の筋力が弱くなる。
また上眼瞼挙筋の先端の挙筋腱膜が瞼板に付いていて瞼の上げ下げの動きを伝えているが、この腱が伸びたり瞼板から外れるために眼瞼下垂が起こることも多い。加齢とともに、瞼が落ち込んだように見えることがあるが、これは挙筋腱膜が伸びたことを代償しようと上眼瞼挙筋が後ろに強く収縮することによって生じる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年6月28日号