世の中でどんな出来事が起きようが、とにかくタイガースの記事が1面。気持ちいいほど「我が道を行く」スポーツ紙が『デイリースポーツ』だ。
球団としては頼もしい媒体だろう。阪神で球団社長を務めた野崎勝義氏(関西国際大客員教授)はこう語る。
「基本的には阪神にとって心強い応援団。特に東京ではタイガースの記事が少ないので、球団を全国区にしてくれている要因の一つだと思います」
確かに、巨人や中日のようなマスコミが親会社の球団であればまだしも、何の資本関係もない媒体が、特定の球団を贔屓にするケースは珍しい。ただ別会社である分、「時には手厳しい記事も書かれる」(野崎氏)という。
「今だから話せますが、私は球団社長時代に、グループ会社にできないか動いたことがある。頓挫しましたけどね」(野崎氏)
『猛虎襲来』などの著書がある、デイリースポーツの元編集局長・平井隆司氏が続ける。
「私も、小津正次郎・球団社長時代に、“デイリーと一緒になりたいんや。調整してみてくれへんか”という相談を受けたことがある。もちろん実現はしませんでしたよ。ズブズブに見られるかもしれないが、実は適度な距離を保っている。過去には阪神から“グラウンドへの出入り禁止”や“会見拒否”になった記者も多数いますからね」
何があっても阪神一辺倒。阪神を愛するからこそ、時にはどのメディアよりも厳しく批判する。そんな姿勢が虎ファンの信頼に結びついているのだろう。
※週刊ポスト2013年7月5日号