「まさか犬の治療に、あんなにお金がかかるとは思ってもいませんでしたよ」──そう振り返るのは神奈川県在住のAさん(58)だ。
昨年、飼っていた10歳のマルチーズ(オス)の食欲が急に衰え、元気がなくなってきた。近所の獣医に診てもらったところ、原因不明と診断されたが、大学病院付属の動物病院で精密検査を受けたところ、末期の大腸がんであることが判明、「余命半年」と宣告された。
「生まれて間もない頃から飼っていて家族同然の存在だったので、できる限りのことはしてあげたいと、大学病院に3週間入院させ、がんの摘出手術を受けさせました。
その時の費用が精密検査、手術、入院費などで35万円。でも、すぐに再発してしまい、その後も入退院を繰り返すことに。その度に10万円以上の医療費がかかったので、トータルで60万円ほどは使いましたね」(Aさん)
何もここで紹介したAさんのケースが特異な訳ではない。
日本獣医師会の調査によると、小型犬の場合、1日の入院費の平均は2706円、骨折手術の平均は3万9290円で、長期入院すれば治療費の合計が数十万円に達することもある。
また犬、猫ともに手術に至ることが多い歯周病の治療には、軽度の場合が2万円台、重度の場合は10万円以上かかる。
「人間と違って動物の場合は健康保険制度がなく、全て自由診療になるため病院によって治療費がまちまちですが、おおむね想像以上に高額です。
また、最近では医療の高度化によって治療費が高くなるとともに、医療の進歩によって寿命が延びた分、病気になるケースが増え、治療費が多くかかる傾向があります。生涯で犬は100万円、猫は60万円の医療費がかかるといわれます」(ペット保険に詳しいファイナンシャルプランナーの平野敦之氏)
※週刊ポスト2013年7月5日号