コピーライター佐々木圭一さんの『伝え方が9割』という本がヒットをしているが、親しき間でも“伝え方”に気を配らないと、コミュニケーションがギクシャクしてしまうもの。元々は他人の夫婦ともなれば、尚更だ。
アナウンサーでNPO「日本スピーチ・話し方協会」代表の大橋照子さんは、一家で5年間アメリカ生活を経験した。日本では「うちの妻は何もできない」とへり下ってけなす年配の夫が多いのに対し、アメリカでは「この人はよくできた人でね」と人前で夫が妻をホメるケースが多かったという。
「日本人の謙虚なところなのかもしれませんが。夫は会社で部下に従ってもらって当然、ということに慣れていて妻にも上から目線でモノを言いたくなる。夫も妻も“お願いします”“ありがとう”の気持ちがこもったモノの言い方でなければ円滑な毎日は送れません」(大橋さん)
夫婦それぞれの本音を言い合うことが重要だが、そのタイミングや言い方にも気をつけたい、と大橋さんは言う。
例えば、夫婦の下した決定の責任を分かち合うことが大事。よくあるのが、夫婦でドライブに出かけて道に迷い、あれこれ悩んだあげく、夫が選んだ道で間違ったとしよう。そんなとき、あなたなら──。
「“ほうらね、私が言った通りでしょ”と言いたいと思います(笑い)。でも結果に対して白黒つけてはケンカになってしまう。たとえ心の中でそう思っていても、“大丈夫。どっちの道に行っても混んでたわ”という言い方をする方がいい。夫婦の勝ち負けを決定する場面ではないのですから…」(大橋さん)
そして会話の初め「いやあ」「でも」「だって」「そうはいっても」などの否定形で返すのは厳禁。せっかく夫が「明日の旅行楽しみだね」と言っても、妻が「でも、どこ行っても渋滞よ」と答えたら、夫婦の会話はどういう展開になるだろうか。
「こういうのを戸締め言葉といい、まさに相手との間の戸を閉めて会話を遮る言葉。否定形で受けては次が続かないので、江戸時代から忌み嫌われていました。たとえ、渋滞が予想されても“うん、そうだね”で答える。一歩下がってこう答えても損はしません」(大橋さん)
※女性セブン2013年7月4日号