人間と違って健康保険制度のない犬や猫などのペット。生涯の医療費は犬は100万円、猫は60万円との試算もあるため、ペット保険が注目を集めている。
ペット保険は、以前は保険業法などで規制のない『無認可共済』と呼ばれる業者がペット保険を取り扱っていたため、給付金の支払いなどを巡ってトラブルが多くあった。
しかし、保険業法が改正され、2008年4月以降、ペット保険を扱えるのは保険会社か少額短期保険業者(保険金額が少額、期間が1年以内の保険の引き受けのみ行なう保険業者)だけになり、トラブルは大幅に減ったという経緯がある。
現在ペット保険を扱うのは10社で、損保3社、少額短期保険業者7社だ。
ペット保険は大きく2種類に分けられる。「定率補償型」と「定額補償型」だ。文字通り、前者はかかった治療費の一定割合を補償するタイプの保険、後者は治療にかかった費用にかかわらず一定の金額を補償するタイプの保険。
現在の主流は前者のタイプで、治療費の50%か70%を補償する商品が一般的だ。
補償範囲は病気、怪我で通院、入院、手術した時の医療費で、対象となるペットの種類も様々だ。やはりその中心は犬と猫だが、保険によってはウサギ、鳥、フェレット(イタチ科)、小動物、爬虫類なども加入できる。
保険によって利用回数や利用額に一定の制限はあるものの、通院の場合の給付金も日額1万円以上のものが多く、入院の場合の給付金が日額3万円、年間の補償金額の上限が100万円というものもある。
さらに、ペット賠償責任特約をつけていれば、自分のペットが他人や他人のペットに噛みつくなどして怪我をさせた場合も補償対象となる。都内在住のAさん(35)が話す。
「秋田犬の流れを汲む5歳の雑種(オス)を公園まで散歩させるのが日課なのですが、ちょうど1年ほど前、チワワを連れた“犬友”のご婦人と会った時のことです。
梅雨のためになかなか散歩に出られず、ストレスが溜まっていたのでしょうか、そのチワワがうちの犬を見るなり吠え始め、近づいて執拗に吠え続けました。そうするうちに、極度の緊張からか、うちの犬がガブリとチワワに噛みついてしまったのです。
それを見たご婦人が激怒し、3万円の治療費を払わされることになりました。その時は、ペット保険に入っていたおかげで自己負担は半額ですみました」
こうしたトラブルに対応した特約がある一方で、ペット保険には死亡保険がないことも大きな特徴だ。
「飼い主がペットを殺して保険金を詐取するのを避けるためです。同様にペットが逃げ出したりして行方不明になっても、ペット保険では補償されません」(ペット保険関係者)
中には、死亡した時に「葬祭保険金」として上限3万円が支払われる保険もあるが、それは極めて例外的。中には、ペットの写真付きの保険証を交付し、ペットの“替え玉”による保険金詐取を予防している保険会社もある。
※週刊ポスト2013年7月5日号