アベノミクス「第3の矢」の柱として掲げられた政策が、「医薬品のネット販売解禁」。副作用や誤使用による健康被害リスクも叫ばれる中、政府がネット販売解禁に拘泥する意図はどこにあるのだろうか。
政府の産業競争力会議で民間議員を務めた三木谷浩史・楽天会長は、「(ネット解禁が)できないなら、議員を辞任する」と強硬に解禁を主張したと報じられた。
安倍首相はその主張を容れて解禁を発表した形だが、これには自民党内からも「いつから我々は三木谷さんのポチになったのか」(橋本岳・代議士)との批判が巻き起こった。
その間、医薬品のネット販売大手・ケンコーコムの株価は暴騰し、2期連続の赤字ながら一時は50万円を超える最高値をつけた(6月20日の株価は23万1400円)。
楽天は昨年6月、「1株5万4943円」で約15億円分のケンコーコムの増資を引き受け、子会社化している。
三木谷会長の“活躍”で株価は4倍になり、約50億円の含み益を得た計算になる。健康被害の危険を増し、利便性向上にも疑問があるネット販売は、いったい「誰のための成長戦略」なのだろうか。日本薬剤師会の藤原英憲・常務理事(医学博士)が語る。
「そもそも“薬がたくさん売れる”ということは、疾病を持つ人が増えるか、不要なのに使う人が増えるかのどちらかを意味します。果たして、それが成長国家といえるのでしょうか。ワンクリックで簡単に薬が手に入る社会の怖さをきちんと伝えていく必要があると思います」
※週刊ポスト2013年7月5日号