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デイリースポーツの一面 阪神ネタで何が一番大事かを最優先

 世の中でどんな出来事が起きようが、とにかくタイガースの記事が1面。気持ちいいほど「我が道を行く」スポーツ紙が『デイリースポーツ』だ。『猛虎襲来』などの著書がある、デイリースポーツの元編集局長・平井隆司氏が語る。

「例えば、全米オープンゴルフで松山英樹君が、最終日に素晴らしいプレーを見せてベスト10に食い込んだ。常識的なスポーツ紙の紙面作りなら1面ですわな。せやけど、我々デイリーからすれば、それがどうしたという感じやね。そんなもんはよそ(他紙)に任しとけ、ウチは虎や! ということですわ(笑い)」

 素晴らしい猛虎愛。ただし、記者たちが全員“虎キチ”だからこういう紙面になっているわけではない。そこにはマーケティングと過去の教訓から導き出された独自のビジネスモデルがあった。

「翌日の紙面についての編集会議は、ナイターの試合が始まる前、午後4~5時頃から始まります。一応、芸能から社会部、ゴルフ、格闘技などの担当が順番に1面候補の記事を提案していきますが、最後に虎番が候補を提出。

 結局、“ほな阪神で行こか”ということで決まります。阪神から始めると、他の担当がやる気をなくすんですわ。東京のスポーツ紙は一番ニュース価値の高いネタで1面を決めるが、デイリーでは“阪神ネタで何が一番か”が最優先されるんです」(平井氏)

 現在も他紙に比べ虎番記者を多数投入。監督・コーチをはじめ、ファームにまで取材網を広げる。ただ、前述したが、記者は阪神ファンばかりではない。

「入社希望の学生が、よく“阪神ファンでないと採ってくれませんか”と質問してきますが、そんなことはありませんよ(笑い)。ま、みんな面接では大の阪神ファンです、というけどね」(デイリー関係者)

 もちろん他球団担当もいるが、とりわけ大変なのは「デイリーの巨人番記者」である。

「取材に行けば“おう、阪神の密偵が来たか”といじられ、暗黒時代には“お前ら給料出るんか”とバカにされた。僕は昔、“出て行け”と巨人のフロントにベンチから追い出されました(笑い)」(平井氏)

※週刊ポスト2013年7月5日号

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