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中国3000年の歴史持つ鍼灸 現在日本より欧米で研究進む

 梅雨の時期には特に頭痛や肩こり、腰痛に悩まされているという人も多い――そんな悩みを解消してくれると多くの人が駆け込むのが“鍼灸”だ。美容やダイエットにも効果があると根強い人気がある。さらに最近話題なのが、パーキンソン病や乳がんなど、最先端の医学をもってしても治療が難しい疾病への対処だ。

「自然治癒力を効率よく、最大限に発揮させる場所が、いわゆるツボです。ツボは全身に約360あり、そのツボを活用して症状を改善していく治療が鍼灸なのです」

 東京有明医療大学教授の坂井友実さんがこう解説する。鍼灸は約3000年前に中国で発祥。日本には、およそ1500年前に伝わったといわれている。そんな中国3000年の歴史を誇る鍼治療の目的は、病気の予防や治療、健康の増進・維持、美容効果。投薬や注射ではなく、ツボに鍼を刺すだけでさまざまな奇跡を起こしてきた。

 その働きは科学的にも証明されている。

「ツボに鍼を刺すと、感覚神経に刺激が伝わり、脳や脊髄といった中枢神経を介して鎮痛効果を発揮したり、消化器や呼吸器などの内臓に好影響を及ぼします。また、筋肉まで鍼を刺すと血行を改善し、痛みの原因物質を洗い流すんです」(坂井さん・以下同)

 一口に鍼治療といってもさまざまな種類が存在する。

「鍼治療に使用される鍼は細いもので0.1mmからあり、最近はステンレス製の使い捨て鍼が主流ですが、金や銀でできた鍼もあります。また、パッチのような形状で2~3日つけたままの状態にしておくものや、皮膚への刺激を目的とする“刺さない”鍼も存在します。

 さらに鍼に通電をする方法もあり、患者さんの体格、体調、不調の原因などを見極めて、どのツボにどのぐらいの深さまで打つのか、刺激をする場所や刺激の強弱、種類、鍼の本数などを考えて鍼灸師が治療法を組み立てる。つまり、同じ肩こりでも画一的な治療は行わない。

 現代医学は“この症状には、こういう薬を”といった型通りの方法をとりますが、東洋医学は個人に応じたオーダーメード。人にやさしい医療なのです」

 具体的には緊張の緩和、生体の防御、リラックス、自律神経の機能調整、循環の改善、鎮痛効果などがある。さらに鍼は病気の治療や予防にも力を発揮するという。

「特に内臓の機能が低下していたり、高まりすぎている症状に鍼は効きやすいですね。例えば、検査をしても異常はないけれど、胃腸の調子が悪い、食欲がないというときは鍼がおすすめです」

 また、がんや難病の症状を緩和するというデータもある。

「鍼を用いることで心身がリラックスでき、患者さんのQOL(生活の質)が高まるという面での有用性です。鍼ががん細胞をやっつけるという意味ではなく、がんに付随する症状を緩和したり、薬の副作用を和らげるといった効果です」

 欧米では鍼灸の臨床研究が進んでおり、アメリカでは、がんの痛みを和らげるなどQOLを改善する緩和医療のひとつとして鍼灸が組み込まれている。

「ここ10年20年で欧米のほうが鍼灸に対しての研究が進んでいて、医療現場に積極的に取り入れられています。また、欧米や中国、韓国では医療制度の中に鍼灸が入っていますが、日本はまだまだ途中段階。将来的に日本の病院にも鍼灸師が常駐するようになれば、と願っています」

※女性セブン2013年7月11日号

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