創業100年を超える名門・川崎重工業に激震が走った。6月13日に開かれた臨時取締役会で長谷川聡社長以下3人の役員が解任された。トップが独断で進めてきたライバル・三井造船との経営統合交渉に他の役員たちが「NO」を突きつけ、3役員を除く取締役全員が緊急動議に賛成するというクーデターだった。
これは決して他人事ではない。高度経済成長後の日本企業の足跡を見れば、そのまま社内クーデターの歴史でもあった。主なクーデター劇を振り返ってみよう。
【三越】1982年9月:岡田茂社長が取締役会で全員賛成により解任。
【ヤマハ】1992年2月:川上源一社長は長男の浩氏を後任の社長に据えるも経営が悪化。労働組合が浩氏に「出処進退申入書」を提出し、浩氏は退任を表明。親子ともども会社を追われた。
【フジテレビ】1992年7月:経営陣が創業家の鹿内宏明フジサンケイグループ議長を追放。
【松竹】1998年1月:奥山融社長と、次男の和由専務を取締役会で解任。
【佐川急便】2000年6月:創業者佐川清氏が経営方針で対立していた息子で大阪佐川社長の栗和田榮一氏を解任。ところが次期社長に栗和田氏が再選され、逆に旧経営陣が追放された。
【マイカル】2001年9月:元警察官僚の四方修社長が会社更生法申請を諮ろうとしたところ、取締役会で解任。
【エイベックス】2004年8月:会長兼社長の依田巽氏と、創業者松浦勝人氏の経営方針が対立し、松浦氏が退社。これに浜崎あゆみら所属歌手が同調したため、依田氏が名誉会長に退き、松浦氏は社長復帰。
【JAL】 2006年2月:日航グループの4人の役員が、3人の経営トップに対し退陣を求めた。
【三洋電機】2007年3月:金融3社による再建中、野中ともよ会長、井植敏雅社長が取締役会を経て相次いで辞任。
【すかいらーく】2008年8月:2006年に2700億円超のMBO(経営陣による買収)を実施して非上場化した後、経営が悪化し再上場に失敗。「現体制では再建は不可能」として、株主が退任要求。反発する社長が株主総会で解任された。
【富士通】2009年9月:取締役会が開かれる直前、会長ほか経営幹部に呼び出された社長は反社会勢力との繋がりを指摘され、辞任。後に「辞任を強要された」として辞任の取り消しを求め裁判となる。
【セイコーホールディングス】2010年4月:銀座の和光本館で開かれたグループ企業取締役会にて社長が解任。同時に臨時株主総会で、長く権勢を誇った名誉会長と女性専務もわずか5分で解任された。
【オリンパス】2011年10月:イギリス出身のウッドフォードCEO兼社長は同社が損失の先送りをしていた実態を問題視し、これを明るみに出そうとしたところ、取締役会で解任。問題は後に表面化した。
【ぺんてる】2012年5月:創業家出身の堀江圭馬社長が業績不振に対する引責を理由に解任された。
【広島電鉄】2013年1月:国土交通省OBの社長が、整備計画の方針を巡り経営陣や市と対立し、解任された。
【川崎重工業】2013年6月:三井造船との合併交渉に関し、社長ら合併推進派3人が解任され、合併計画も白紙に戻された。
※週刊ポスト2013年7月5日号