急激な経済成長の代償は決して小さくないようである。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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中国の若者の間でなぜかいま「裸奔」(ストリーキング)が大流行しているという。今年5月、北京ではストリーキングをして捕まる若者がにわかに急増して話題となったが、その流れはいまも健在のようだ。
6月14日、今度は何と中国の最難関大学として知られる北京大学のキャンパス内でストリーキング事件が発生した。
時間は夕方の4時、キャンパス内にある未明湖と名付けられた池のほとりで、突然2人の若い男がほぼ全裸でパフォーマンスを行ったというのだ。
2人の男はそれぞれ赤いTバックと靴だけの姿で、脇にはなぜかダッチワイフを抱えていた。そして2人はダッチワイフを抱えたまま池に飛び込もうとしたが、その前に警備員に取り押さえられ、それで一件落着となったようだ。
2人はともに北京大学のOBで自称作曲家ということだが、ストリーキングをした理由については、「、これは〝行動芸術〟で、その目的は音楽の知的財産保護を訴えるため」と答えたそうだ。
だが、事件後に彼らにインタビューした『新京報』は、記事中でこの理由を素直には受け取っていなかった。そもそも音楽の知的財産保護が目的ならTバックとダッチワイフを持つ意味がないからだ。
「中国の若者の間でストリーキングが増えているのは、やはりいまの中国社会で苦しむ若者が感じている閉塞感と無縁ではないのでしょう。明らかに不満を訴える一つのツールとなっています」(党機関紙記者)
やはり5月には大連市で若い女性のストリーキング事件が起きている。その場所も大連の理工大学の東門という。服を脱ぎ捨てた女性は、そこに座り込んだまま動かなくなったという。
このときは学校の警備員ではなく警察官が駆け付けたが、その女性はストリーキングをした理由を問われても、一切答えず無言を貫いたという。
同じ5月には北京市朝陽区で若い男が毎日同じ場所でストリーキングをやり続けるという事件も起きた。その人物は裸で十字架を背負って歩くというパフォーマンスを繰り返したという。