軽井沢に建設中のとある別荘。本誌カメラマンがシャッターを切ると、「プライベートなので撮らないで」と、すかさず警備員にシャットアウトされた。たかだか個人の別荘にしては、やけに物々しい──。
「実はあそこ、ビル・ゲイツの別荘なんですよ!」と耳打ちするのは、近隣住民。マイクロソフト創業者のあのビル・ゲイツ氏(57)がオーナーだというのだ。今年5月にブルームバーグ通信の調査で“世界一の富豪”に返り咲いた同氏。資産は727億ドル(約7兆4300億円)とも。いわれてみれば敷地も建物も、異様にデカい!
そこで本誌が空撮するとご覧の通り、界隈の別荘と比較しても桁違いだった。皇族やセレブゆかりの千ヶ滝・西区にあり、約2万2000平方メートル(約6600坪)。中軽井沢の市街が一望できる地上1階・地下3階の豪邸だ。約1万5000戸の別荘がある軽井沢町でも、「あれほど巨大な別荘は他にない」(不動産業者)とか。総工費は80億円ともいわれている。
実は、地元では昨年からこの話題で持ちきりだった。造成が始まったのが1月。3月には長野県の建設業界紙『新建新聞』が早速〈軽井沢にビル・ゲイツ氏の別荘!?〉と噂を追い、『信濃毎日新聞』や『長野建設新聞』など地元紙が続々と報じた。
いずれもゲイツ氏の別荘だとは断定していないが、それでも現地では、「ゴルフをする仲で、軽井沢に別荘を持つソフトバンク孫正義社長の仲介だそうです」(タクシー運転手)、「心酔するジョン・レノンが愛した軽井沢だからですよ」(地元商店主)と、まことしやかに情報が飛び交う。
「ヘリポートがある」「いや、モノレールができるときいた」「京風の露天風呂が8つもあるらしい」「個人美術館も付いているって」と、その情報がまたやけにリアルなのだ。
だがこれほどの地元フィーバーをよそに、ゲイツ氏を示唆する確固たる決め手は残念ながら未だない。登記上の所有者は不動産リゾート建設を行なう都内企業だが、不在で真偽はわからず。ゲイツ氏が理事長を務める「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」からも回答がなかった。同物件の前所有者のIT企業も、現オーナーは把握していないと語る。
ゲイツ氏の軽井沢別荘計画は世界の富裕層にも知れ渡り、新たなビジネスチャンスを求めて追随を目論む富豪もいるという。「震災以降、軽井沢は土地の価値が下がっていたがビル・ゲイツ効果で持ち直した」なんて声も、地元業者からきかれた。
完成は今冬を予定。真相はともかく、噂だけでここまで影響を及ぼすとは恐るべし、世界のビル・ゲイツ。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年7月12日号