竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「クーリングオフの期間が過ぎても、返品と返金は可能なのか」という質問が寄せられた。
【質問】
ネット通販で海外ブランドのジーパンを現金代引きで購入。しかし、品物が届いた日に実家で不幸があり10日ほど家を空けてから試着したところ、サイズが合わないため業者に返品と返金を要求したのですが、クーリングオフは1週間以内だとして応じません。こういう場合、やはり返品と返金は無理ですか。
【回答】
通信販売に適用される特定商取引法は、クーリングオフ期間を「商品の引渡し又は指定権利の移転を受けた日から起算して8日を経過するまでの間」と定めています。商品を受け取った曜日の次週の同じ曜日まではクーリングオフできるということです。当該業者がいう1週間ですが、期間を何週間と定めたときは、翌日から起算しますから、この定めと同じことです。
仮に商品引き渡しの当日から1週間という趣旨だと、法文とは違いますが、販売業者が返品について別の条件を定めて、ネットの申し込み画面上に表示していれば、その表示された条件に従うことになっており、クーリングオフの期間を1週間と定めた扱いは違法とはいえませんし、すでに10日経過しているなら、クーリングオフはできません。
いったん成立した契約は特別な事情がない限りは取引を止められないのです。クーリングオフは、消費者保護のための例外ですから、例えば大災害による通信手段の途絶など不可抗力でないと、期間経過後のクーリングオフは無理です。
しかしながら、商品に品質不良やサイズ間違いがあった場合は別です。またサイズが合っていても、仮にそのサイズに通常備わっている寸法ではない部分があると品質不良として商品の欠陥(瑕疵)になる可能性があります。商品に瑕疵があって目的を達成できないとき、買主は契約を解除して返品できます。
通販業者がこの瑕疵に基づく返品も1週間で制限するのであれば、その旨の表示も必要で、単にクーリングオフだけの広告だと、民法の規定に従った瑕疵担保責任を負います。その場合、すぐにわからない瑕疵の場合は、知ってから1年間以内に返品できます。サイズが合わない原因が業者側に責任ありと思われるときは、消費者センターなどへの相談も有効です。
※週刊ポスト2013年7月12日号