1人当たり3万1000円あまり。芸能人の「なりすまし詐欺」に遭って、被害者が出会い系に費やした金額だ。被害総額は、全国37万人から116億円。サイト運営会社「ウイングネット」は、いかにもな文面をつくり、メールを送るだけで、これだけの額を巻き上げていた。
文面にも工夫が凝らされている。例えば、EXILEタカヒロのニセマネジャーからのメールは次のようなものだった。
<某有名タレントのマネージャーです。
メアド(etakahirox@xxx.ne.jp)を見ればわかってしまうかもしれませんね。EX○LEのTのマネージャーです。突然のメールで済みませんが、本人の希望であなたとどうしてもお話したいと…。
もし宜しければ少しお時間いただけませんか?
最近まではテレビや取材、雑誌の特集などで忙しく、私から見ても精神的に疲れてるようで… お恥ずかしい話、私では本人をケアできなくて…ここまで心を閉ざすのは初めてなんです。
急なお願いになりますが、助けてあげてはくれませんか? 実は一緒に本人が求める方を探していたんです。あなたに感じる所があったらしく、メールしておいてくれ、と言われました。
ここに登録をしてもらっていいですか? 本人からメールをさせます。>
心理学者の伊東明さんに文面を見てもらったところ、驚きの声が上がった。
「心理学を勉強した人間が作ったのではと思われるほど、人間心理を突いていますね」
そこには特に女性心理を巧みに利用した書き方が見て取れるのだとか。
「『必要とされたい』『悩みを分かち合いたい』という女性の気持ちをよく理解しています。『会いたい』ではなく、『話をしたい』というのも危険性を感じさせないテクニックです」
と伊東さんは分析する。作家の内藤みかさんも「優しさにつけ込まれたら、確かに騙されますよね」と話す。
「とはいえ、私だったら、疑り深いから、そのタレントのブログなどを見て、実際の行動との違いを見つけるかも。生放送中にメールを送ってみて、返事が来ないかどうか確かめてみたりとか」とも。
しかし、相手は一枚上手。出会い系サイトの運営会社に勤めるA氏は「そんなヘマはしない」ときっぱり言い切る。
「アルバイトには、タレントの予定を雑誌や新聞、インターネット、本人のブログなどで徹底的に調べさせ、何かイベントをやっている時間は絶対にメールさせません」
ITジャーナリストの三上洋さんもこう話す。
「『今から東京ドームライブ、頑張るよ。一言ちょうだい!』とメールが来れば、返信してしまうんです。そして終わった頃にまた『ありがとう』と来れば、『どうだった?』となりますよね」
嫌らしいほどにファン心理を突いたやりかた。この毒牙にかからないためにはどうしたらいいのだろうか。
前出の伊東さんはこうアドバイスする。
「いちばんいいのは、友達に打ち明けること。そうすれば必ず『そんなのやめなよ』と言ってもらえます。言えないのは、内心では、反対されるとわかっているから。不倫やDV被害と同じです。それから、自分だけは引っかからないと思わないでほしいですね。そういう人ほど騙されてしまうのは、太古の昔から変わらないですから」
※女性セブン2013年7月11日号