いま欧米では、「Euthanabe」(ユータナベ)なる言葉が登場している。フランス語の「Euthanasie(安楽死)」と「Abe(安倍首相)をかけた造語である。
きっかけは6月11日放送のフランス・ニュース番組に登場したファイナンシャルコンサルタントのオリビエ・ドゥラマルシュ氏が、「安倍首相の経済政策はみんなが呼ぶ『アベノミクス』のような代物ではない。世界はこの国の財政赤字を見逃している。私はそれをむしろ『Euthanabe』と呼びたい」と発言したことだった。つまり同氏は「アベノミクスは、日本経済を安楽死させる」と主張したのだ。
日本では「アベノミクスが海外で絶賛されている」との報道ばかり目立つが、実際にはアベノミクスへの揶揄が目立ち始めている。たとえば6月18日付英デイリーメール紙はこうだ。
〈日本の『新人』安倍晋三の新ケインズ主義的な、カネを使え、使え、使えというアプローチは、アングロサクソンによるもっと注意深いアプローチとぶつかり合った。ところで、晋三、素晴らしい髪型だ。(ロカビリーの歌手の)シェイキン・スティーブンスと同じ床屋に行ったの?〉
安倍首相を小馬鹿にしながら、アベノミクスの金融緩和や財政出動が、英米の緊縮財政路線と真っ向から対立すると指摘している。ほかにも様々な比喩でアベノミクスはいじられる。
〈15年のデフレの後、日本の指導者が再び劇的に方向を変え、インフレに向かって猛スピードで走っている。戦略的な意味では、この急激な変化は『パールハーバー』を思い起こさせる〉(英フィナンシャルタイムズ)
〈日本は年間のGDPの倍以上の債務の「フジヤマ(富士山)」を蓄積してきた。(中略)だが日銀新総裁は、このリスクある債券を買い入れようとしている〉(独シュピーゲル)
よくまあネタが尽きないものだが、〈安倍の大胆な実験が変化をもたらしても、女学生がセーラー服で学校に行くのは変わらないだろう〉(英インディペンデント)とのたとえは、いくらなんでも古すぎないか。
※週刊ポスト2013年7月12日号