現在サーベラスとの対立の家中にある西武グループ。“総帥”と呼ばれた堤義明氏が西武グループの経営を支配していた時代、グループが一丸となって何かに取り組めるような雰囲気はなかったという。たとえば、道を隔てて向かい合う品川プリンスホテルと高輪プリンスホテルは、顧客の取り合いや値下げなどで争っていた。まるで役所の縦割りのようだったかつてから、今では横の連携を取り始めているという西武グループの変化について、ジャーナリストの永井隆氏がリポートする。
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“堤時代”の縦割りから、横の連携へこれはグループのあちこちで見られる現象だ。西武HD社長室の緒方寿光マネジャー(42)は、今年度から始まった、小学生に田植えや仕事体験、スポーツ体験などを提供する「西武塾」の事務局を担当している。
「プリンスホテルやグループの新横浜スケートセンター、横浜・八景島シーパラダイスなどの施設に触れてもらい、“西武ファン”になってもらおうという試みです」(緒方氏)
一方でこのプロジェクトは、西武グループ内の社員の結束を高める狙いもある。
「子供たちの世話をするためにグループに社員ボランティアを募ったところ、114人も集まりました。グループ会社の役職者から若手まで多士済々。『グループの他社の人と知り合いたい』という人もいれば、『本社の管理部門でお客さまと会う機会がないから、会ってみたい』という人もいます。そこで化学反応が生まれ、新たなビジネスのアイデアが生まれることを期待しています」(緒方氏)
別のグループ幹部は「社員の顔が明るくなってきた」と語る。それはいいことだ。横連携も進めるべきだろう。しかし、株主は「結果」を急いでいる。すべてのステークホールダーを納得させつつ成長のレールを走っていけるか、西武は正念場に立っている。
※SAPIO2013年6月号