お笑い芸人がたびたびテレビで自嘲的に語るように、芸人は「ブームが過ぎ去る」危険性と常に隣り合わせの職業だ。もちろん、芸人ブームの波に乗れるのもごく一部の限られた才能だけ。下積み時代には、「笑い」だけで生計をたてることはほぼ不可能だという。
そのためお笑い芸人は、多少メディアに出られるようになっても、アルバイト生活を続けている場合が多い。かつて、吉本興業でブラックマヨネーズらと同期だった男性(38歳)は、自身のアルバイト経験について次のように話す。
「芸人は養成所に通ったり、事務所に所属してレッスンを受けながら定期的にお笑いライブに出ます。新しいネタを考えるために、相方と自宅やファミレスに集まってネタを持ち寄り、練習をする。そのためにアルバイトにあまり時間は割けません。働きながらネタを考える暇があるような職種を選んでいましたね。それから、“人間観察”ができて笑いのネタにもなる職場というのも大事です」
そうした理由もあって、新宿・歌舞伎町などの繁華街でアルバイトする芸人が多かったという。
「自分は、キャバクラの無料案内所でアルバイトしていました。10時から18時までという時間帯で、シフトの融通も利く。なにより関わる人間が皆、おもしろい。
現在テレビに出ていて活躍している吉本芸人のなかにも、歌舞伎町でアルバイトをしていた人はかなり沢山いますよ。芸人同士だと、誰がどこでアルバイトしているかは耳に入ってきますからね。
歌舞伎町で出会った人間は本当に色々なタイプの人がいました。ホストから薬物中毒者、ヤクザまで……。自分は下積み時代、樹海探検などかなり危険な仕事をさせられていましたが、辛い仕事もこなす根気を養うためには、アルバイトの現場も日々訓練になりました」(同前)