総合格闘技などを中心に、圧倒的な強さで人気を集めたボブ・サップ。その強さだけでなく、サービス精神旺盛なキャラクターと相まって、多くのバラエティ番組やCMで活躍していた。しかし、格闘技イベント主催会社のファイトマネー不払い問題などが発端となり、ここ数年は日本の芸能界から遠のいた印象だった。
一時は、韓国のバラエティ番組で「催眠術師」として登場した動画が話題になるなど、ファンからは“どうしたんだ? ボブ・サップ”という声もあった。だが今年6月には、彼が登場する大手企業CMが相次いでオンエアされ、華麗な復活を遂げている。ひとつはソフトバンクモバイルの人気シリーズ「白戸家」で、ダンテ・カーヴァー演じる兄が“一皮むけた”姿として出演。ほとんど「出オチ一発」ともいえるが、あの見た目のインパクトは大きい。
また明治安田生命保険「医療費リンクシリーズ」では、妖しいマスクに心を乗っ取られてしまったレスラー「ビョウキング」として登場。CMとはいえ、技を掛けたり掛けられたりといった雄姿や、変わらぬビーストぶりを見て“おぉ!”と反応した人も多いようだ。
こうした立て続けともいえる起用のされ方について、広告代理店の関係者は「サップならではの強みがある」と語る。
「ボブ・サップに限らず、一度売れた人には全国的な知名度があります。さらにサップの場合は、体型・見た目がアイコニックですよね。最近目にしていなくても、ひと目でわかる。みんな忙しくて、コミュニケーションのスピードが上がっているので、『すぐわかる』ことは大きなポイントです。
ソフトバンクのCMも体型の変化をネタにした使い方ですし、明治安田生命の場合は覆面していても彼だとわかる――あんなガタイの人、他にいないですからねぇ(笑い)」
ボブ・サップといえば、あの肉体だけでなく、ワシントン大学で社会学と薬学を専攻した上に3年間で卒業した頭脳を持ち、しかも女性に紳士的といった評判でも知られている。彼がCMやバラエティに多く出演していた頃、番組内で周りを楽しませながら笑顔になっているのを見て、才色兼備な女性が何人も「タレントを見て『デートしたい』と思うことはほとんどないけど、ボブ・サップとは1度でいいからデートしたい」と言うのをよく耳にした。
「カラダが野獣で、インテリジェンスがあって、女性に対してジェントルマンだなんて、男として最強じゃない?」と言われ、どの要素もゼロな記者は“聞かなかったフリ”で乗り切るしかなかった……悲しい思い出だ。そんなことはさておき、「今後こういったケースが増えそうだ」と、前出の代理店関係者は分析する。
「実は『最近、売れてない』というのも、逆にCM的にはポイントなんです。それというのも、テレビCMは意外性を演出して、注目を集めることを狙いますが、今現在テレビに出まくっている人がCM出演しても、よほど変わった使い方をしないとインパクトはない。
そんな中で、知名度はあっても露出が減っている人をキャスティングすれば、それだけで驚いてもらえますよね。こうした『あの人は今』的な人が出るCMは、今後も増えていくかもしれません」