「仕事はしなくてもいい。おカネなら私が残してあげられるから。それよりも自分がいなくなったあと、この子が独りになることが怖いんです。だから結婚だけはどうしてもしてほしい。もう相手は誰でもいいんです」(38歳無職女性の母親である65歳女性)
かくして、子供の婚活に必死になる親が多い。
6月25日に閣議決定された「少子化社会対策白書」が、婚活業界に衝撃を呼んでいる。国勢調査を元に算出された2010年の「生涯未婚率(50歳の時点で結婚経験のない人の割合)」が、男性は20.14%、女性は10.61%。男性が2割、女性も1割を超えたのは、調査発足以来、初めてのことだ。
とりわけ男性の5人に1人が「生涯未婚」というのは驚くべき結果で、30年前と比較すると男性は約10倍、女性は約2倍に上昇している。
現在では、子供が結婚しないことに業を煮やした“親が参加する”婚活サイトや婚活パーティなどが百花繚乱の様相を示している。親が相手を見つけ、子供に「結婚してもらう」時代になっていたのだ。
島根県の少子化対策推進室では、2007年から婚活交流サロンを設置し、出会いの場を提供していたが、
「ご本人だけでなく親がついてくるケースがとても多かった。ひょっとしたら、子供以上に悩んでいる親は多いのではないかと考え、『親からはじめる縁結び交流会』を2012年10月から開催したら、初回の募集では、予想外の反響で定員30人のところ110人も応募があって抽選になりました」(担当者)
それだけ婚活に熱心な親が多いということだ。
ただし、親主導の婚活が難しいのは、子供にその気がなければどうにもならないという点だ。さらには何度か相手に振られたりすると、トラウマになって逆効果になったりもする。子供に写真を持って行っても「俺は結婚しない主義」などといわれ拒否されるようになりがちである。
関西在住のMさん(70歳)は、結婚にまったく乗り気ではない長男(38歳)に強硬手段に出た。「釣書ばらまき作戦」だ。釣書とは、お見合いで互いに取り交わす自己紹介を載せた書面のことである。
Mさんは本人に黙って近所で手当たり次第に釣書をばらまいていたところ、それが息子の耳に入り、「俺の個人情報をばらまくな!」と激怒。「結婚なんてしない」と意固地になってしまったという。それでもMさんはへこたれない。
「中高一貫の私立を出て、東大院卒、昔は我が息子ながら阿部寛に似た男前だと思っていた。まさか息子が40歳間近になっても結婚できないとは思いもしませんでした。本当に相手にはこだわらないので、私が元気なうちに結婚さえしてくれれば……」
こう嘆きながら、今日も釣書を片っ端からばらまいている。
※週刊ポスト2013年7月12日号