日本のプロ野球が使用する統一球はミズノ製のみである。そのミズノが秘密裏に統一球の数値を変更したのではないかと疑われていた背景について、作家の山藤章一郎氏が報告する。
* * *
神戸市ポートアイランド〈アシックススポーツミュージアム〉は、スポーツの進化が体感できる。
週末、雨降りで館内は閑散としていた。イチローほかトップアスリートたちのシューズが展示され、一角に、〈触(タッチ)〉というコーナーがある。メジャー、WBCから、高校野球の公式球まで展示され、触ることができる。
アシックスは、メジャーとWBCの公式球に使われている米国・ローリングス社のボールを販売してきた。ミュージアム担当者の話。
「今回の騒ぎにはびっくりしました。世界基準に合わせるなら、〈ローリングス〉にすればいいと思うんですけどね」
現役のスコアラーの解説。
「そもそも統一球をミズノにするといったのは、コミッショナーです。巨人は練習球もミズノですが、練習ボールで違うメーカーを使うヤクルトやロッテは練習と試合の〈飛び〉がちがってくる。各球団に混乱は大きかったのです。
係数変更で、今年のボールが事前に〈飛ぶ〉と分かっておれば、バントや盗塁に力はそそがず1番から8番まで大砲をそろえ、とにかく強打させることもできた。
開幕直後の巨人の独走……私たちスコアラー、打撃コーチ、みな、あれっと思ったんですよ」
※週刊ポスト2013年7月12日号