“中国で最も有名な役人”に判決が下った。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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地方官僚の贈収賄事件が全国の注目を集めたのは6月28日のことだ。
名前は雷政富。元重慶市北碚区党委書記と聞いてもピンとこない日本の読者は仙台市くらいの規模の市の区長をイメージしてみると良いかもしれない。この日、同市の第1中級人民法院(地裁)が被告に下した判決は、13年の実刑。政治権利の剥奪、30万元の財産没収及び約300万元(約5000万円)の収賄金の国庫への返納であった。
地方の役人とはいえ、収賄額がこれでは少な過ぎるといった点を除けばごくありふれた贈収賄事件という他ないが、実はこの雷氏、一時は中国で最も有名な役人とも呼ばれた人物だ。
というのも雷は、彼の愛人が盗撮したセックスビデオをネットに流され、ほとんどの国民によってその行為が鑑賞されたという人物なのだ。当初、雷政富という名前よりも、雷十三(動画のなかでわずか13秒で果てたため)とか雷六三(ビデオ発覚から63時間で首になったため)と呼ばれた男だ。習近平が総書記に就任した直後に話題になった事件だけに、習体制後の処分第一号であったことも話題を呼んだのだった。
ここまで自分を晒してしまえばもはや怖いモノもなくなったのか、法廷では堂々とした態度であったが、それでも13年の実刑にはショックだったようで、閉廷後まもなく上告を決めたことが伝えられた。盗撮動画を使って脅迫した上に公開した女やその背後の商人がそれぞれ2年(しかも執行猶予2年)と10年だったことも彼を刺激したのだろう。
もともと官僚腐敗問題に対しては強い関心が集まる中国社会では、この事件に対しても激しいリアクションが見られた。その中の一つに、微博(ミニブログ)での呼びかけで、「これからは腐敗官僚の摘発のために全国の愛人たちに協力を求めよう」というものまであったほどだ。
中国共産党中央もどれだけ呼びかけてもなくならない汚職や腐敗行為に頭を痛めてきた。2010年には中国初となる汚職摘発を専門とする官僚を育てるためのコースを大学院のなかに設置したほどだ。中国でも官僚養成機関として名高い中国人民大学で、その名も反汚職修士。もし履歴書に書いて一般企業に送ったら、人事担当者はさぞビビることだろう。