サムスンやLGなどが世界市場を席巻しているが、その一方で韓国国内では信じられないほどの格差社会が急速に広がっている。その現状について、ジャーナリストの対馬守氏が解説する。
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昨年12月、私は大統領選挙の翌日に韓国を訪ねたが、朴槿惠新政権への期待を語る韓国人はほとんど皆無だった。彼らは一様に疲労感を漂わせ、希望が見出せない将来を嘆いていた。
その背景には相対的な貧困感がある。現在の韓国では日々の食事に事欠くような深刻な貧困はほぼ解消されている。その代わり、学歴や年齢に見合うような、あるいは他人と同じような地位や収入が得られないことに、国民の多くが苛立っているのだ。
給与所得の格差が拡大した理由は、非正規職(契約・派遣勤務)の割合が大きいことと、大企業と中小企業の給与に大きな開きがあるためである。
中小企業中央会が発表した『2013・中小企業位相指標』によると、中小企業の月平均給与は大企業の6割に過ぎない。最近ではサムスンやLGなど輸出関連企業で働く者と、それ以外の産業で働く労働者との賃金格差はさらに拡大している。
また韓国は大学・短大進学率80%を超える超学歴社会だが、大卒者の失業率は38%に達している。職を得たとしても正社員ではなく契約社員や派遣勤務である場合が多い。そうした雇用条件で働く若年層に話を聞くと、
「雇用が不安定で給与も少ない非正規職で一生暮らしていくと考えると絶望的になる」
「働きながら公務員試験を準備しているが、合格できるかわからないため結婚など考えられない」
「両親からいまだに小遣いをもらっているのがつらい」
といった声が聞こえてくる。さらに契約社員や派遣勤務よりも劣悪な労働環境に置かれているのが、コンビニなどで働くアルバイトだ。
法定最低時給は4860ウォン(5月29日時点のレートで437円)だが、大部分のコンビニは法を無視し、4500ウォン(同405円)以下しか支払わない。事実上、「最低賃金が最高賃金」状態なのである。
こうした若者たちの多くが親元で生活するか、大人数で安アパートを借り、シェアすることで居住スペースを確保している。
※SAPIO2013年7月号