ロンドンの大英博物館で10月3日から3か月にわたって開催される『春画──日本美術の性と楽しみ(仮)』の特別展覧会。春画展は、イギリスでも初の開催となる。
700万点を超える収蔵品を誇る同博物館が春画の収蔵を始めたのは1865年、日本では幕末の時代だ。性をタブー視するキリスト教的宗教観の強かった当時の西欧では、春画が描き出す江戸の人々の奔放な性風俗は衝撃を持って受け止められ、社会学的な研究の対象にもなっていく。一方で、構図や色彩感覚、木版画の技術といった卓越した芸術的価値が認められた。
春画展では約170点の名作が展示される予定だが、所蔵コレクションの最大の目玉は、“東西の横綱”といわれる喜多川歌麿の『歌満くら』と、鳥居清長『袖の巻』。各全12図で前者は7000万円相当、後者も4000万円相当の価値があるとされ、この2つを所蔵している博物館は世界でも大変珍しい。
ハワイのホノルル美術館でも春画展が開催されるなど、世界的にも春画が熱を帯びるなか開催される展覧会。浮世絵研究家の白倉敬彦氏が開催までの経緯を解説する。
「このプロジェクトは、イギリスのリバーヒューム財団からの研究助成を受け4年前からスタートした大規模なものです。当時の西欧は、体位といえば正常位しか許されなかった時代。その時代に日本ではこんなに自由な性文化があったのかという点が、外国の人には驚きに値するようです。現代では逆に、西欧のほうが性に対する姿勢がオープンで、日本ではいまだ春画展の開催が実現しません」
メイド・イン・ジャパンの素晴らしいアートである春画。日本での春画展開催がやはり待ち望まれる。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号