日本の外務省はいま、6月初めに行なわれたアメリカのオバマと中国の習近平主席の会談で何が話し合われたのかを懸命に探っている。会談から1か月も経つのに、日本政府は米中トップ会談の内容どころか、夕食会への米中双方の出席者の名前さえ把握できていない。米国が同盟国のはずの日本に教えないのである。
外交問題に詳しいジャーナリスト・歳川隆雄氏が指摘する。
「中国はこの春には尖閣問題で日本に軟化姿勢を見せていたが、4月のケリー国務長官の訪中や米中首脳会談を経て再び対日強硬姿勢に転じたという。米中で何か合意があったのではないか、それを知るには首脳会談の詳細を探る必要がある」
焦った日本側は先日のG8サミットの機会に日米首脳会談をセットしようとしたが、これも「オバマ大統領に拒否された」(外務省関係者)のだ。
なんとしてもオバマ大統領に会いたかった安倍首相は、サミット首脳会談が始まる直前、会場入り口で数分間の立ち話ができたことで大喜びした。フェイスブックに「もろもろ話しました。(ゴルフ談議も含めてですが)」と書き込み、わざわざ2人で並んで会場に向かう写真までアップした。米中会談の話を聞くどころか、“会うのがやっと”の関係なのだ。
いまや「立ち話会談」は日本の首脳のお家芸だ。かつて麻生太郎元首相はサミットのワーキングディナーの前後にオバマ大統領と立ち話をして「合計25分の首脳会談」と呼ばれた。昨年3月の核安全保障サミットでは、野田佳彦・前首相がオバマ大統領との「2分間の立ち話会談」に漕ぎ着けた。「民主党政権下で冷え込んだ日米関係を立て直す」という安倍首相だが、実は、その仲間入りをしただけなのである。
国際関係論が専門で日米外交に詳しいウイリアム=グリムズ・ボストン大学教授は、オバマ政権の対日、対中外交のスタンスをこう指摘する。
「安倍首相はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加でそれなりにワシントンを喜ばせた。しかし、オバマが安倍氏を評価できないのは従軍慰安婦をはじめ歴史認識見直しを主張しているからだ。
対中姿勢にも不満を持っている。安倍氏はオバマ大統領に米中首脳会談で“尖閣防衛では米国は日本の味方だ”といってほしかったのだろうが、それは失敗に終わった。安倍氏に批判的な韓国の朴大統領をワシントンをあげて歓迎し、議会演説までさせたことは日本への牽制だと受け止めるべきです」
※週刊ポスト2013年7月19・26日号