ネタばれ情報を探すべく今日も必死に『あまちゃん』を見ていた本誌記者は、はたとそのことに「気づいて」しまった。もしかしたら、とてつもないスクープを発見してしまったのかもしれない──。記者のカラダはかすかに震えていた。
「気づいて」いるのは記者だけなのか? インターネットでファンの声を調べると、やはりこんな声が上がっていた。
〈太巻と春子がつきあっていて なにか行き違いがあって別れることになり 北三陸に帰ろうと乗ったタクシーの運転手が正宗 そのとき春子のおなかにはアキがいた それも含めて正宗は春子を引き受けた……的な〉(ネットの書き込み)
そう、アキは「太巻と春子の間にできた隠し子」なのではないか──。
記者が「気づいた」のは、6月26日の放送回。春子と離婚した元夫の正宗が、電話でアキの芸能界入りについて話す場面である。
〈正宗「大丈夫か芸能界なんて。だまされてるんじゃないのか?」
春子「大丈夫。社長が太巻だから!」
正宗「え、太巻!?」
春子「へえ、知ってんだ」
正宗「知ってるも何も……それ、ダメだろ……」〉
これまでも太巻と春子の間には、“過去に何かあった”ことが幾度となく示唆されてきた。が、アイドルを夢見て上京した春子と、ダンサー崩れでくすぶっていた太巻との出会いは明らかにされたものの、その後の2人についてはいまだ謎のままだ。
わかっているのは、太巻がその後、女優・鈴鹿ひろ美のデビュー曲『潮騒のメモリー』をプロデュースしヒットメーカーの仲間入りを果たすこと。一方、アイドルの夢破れた春子は正宗と出会い、アキを産んだということだ。
そうした情報から、これまでファンの間では、「春子が歌うはずだったデビュー曲をひろ美が奪った」「春子はひろ美のゴーストシンガーだった」「太巻、春子、ひろ美は三角関係で春子は振られた」などの説が取り沙汰されてきた。
だが、脚本は視聴者の予想を裏切る男、クドカンである。生半可なストーリー展開のはずがない。
もし、太巻と春子の因縁が、アキという隠し子をめぐるものだったら……もしそのアキが実の父親にプロデューサーとして再会するとしたら……それこそ、育ての親である正宗をして「それ、ダメだろ」といわざるを得ない展開であろう。
そこで記者は、今一度全放送回を見返した。すると、自ずと1つのストーリーが浮かび上がってきたのだ。
まず、『潮騒のメモリー』は太巻が春子のために作ったデビュー曲のはずだったが、何らかの事情でひろ美に奪われ、失意の春子は故郷に帰る。そのとき乗車したタクシーが、正宗の運転するものだった。
このまま春子と正宗は順風満帆──かと思いきや、その後春子は、期せずして太巻と再会し、一夜限りの関係を結んでしまう。そこでできた子が、アキだったのだ!
伏線は、名前にあった。アキの名は、夏、春子に続くものと思いがちだが、なぜ彼女だけがカタカナ表記かといえば、実はアキ=秋ではなく、太巻の本名である荒巻=アラマキ、略してアキなのだ!!
太巻にこの事実は伝えられていない。アキが自らの父を知ったとき、物語は本当のクライマックスを迎える──。
この“世紀”の発見に記者は「これぞ、本当のネタばれです!」と編集部で披瀝したが、同僚からは「絶対にあり得ない」と一蹴され、上司からは「はまりすぎておかしくなってる」と心配される始末……。
「おらは誰なんだ~!」と平清盛よろしく叫び出すアキの姿は、やはり妄想に過ぎないのか!?
※週刊ポスト2013年7月19・26日号