参院選挙が始まった。自民党も大メディアも「ねじれが解消され国会が機能するようになる」と喧伝するが、そもそも衆院と同じなのであれば、その存在に意味はない。今だからこそ、参院の必要性をきちんと考えたい。
国会議員の歳費や手当は衆参同じだが、“実質的な実入り”で見ると参院議員の方が衆院議員より大きい。
まず議員の個人口座に振り込まれるのは歳費(給料)の年間約2200万円(2014年まで2割カット)、それに「文書通信交通滞在費」が年間1200万円支給される。これは非課税であり、所得税(最高税率45%)と住民税(10%)がかかるサラリーマンの課税所得に換算すると約2666万円に相当する。
加えて、選挙区との通勤に使うJRの無料パスや無料航空券が1人平均で181万円、外遊のための議員旅費が約55万円、合わせてざっと5000万円だ。実質所得は6年間で約3億円なのである。
これに議員会館の事務所が無料で提供され、格安の議員宿舎もある。政治活動費としては、政党助成金から支給される支部交付金や選挙の公認料、会派に入る立法事務費などがある。自民党のベテラン秘書が語る。
「多くの衆院議員は選挙区に2~3か所の事務所を構え、国から給料が支払われる3人の公設秘書以外に、少なくとも2~3人、多い場合は10人近い私設秘書を雇用している。その経費を賄うのは交付金ではとても足りないから、集金力がなければ持ち出しになる。
しかし、参院議員は地元に事務所がせいぜい1か所、秘書も公設秘書3人とアルバイトくらい。比例代表選出となると議員会館の事務所だけで、秘書も出身団体から手弁当で送り込まれるから、歳費や文書通信交通滞在費ばかりか、うまくやれば政治活動費も手元に残る」
衆院落選組が鞍替えを狙うのも頷ける。 次の選挙で引退を決めた参院議員が、親族を公設秘書に登録して税金で給料を払わせ、議員会館の事務所は休眠状態、本人もほとんど国会に顔をみせずにひたすら隠居資金を貯め込んだケースもある。
まさに国民にとって百害あって一利もない「穀潰(ごくつぶ)し議員」である。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号