梅雨明けで酷暑続きの日々。アフター5に会社の同僚たちと暑気払いに繰り出すサラリーマンも多いはず。だが、気候に関係なく、ここ数年失われていた「飲みニケーション文化」の復権があちこちの企業で見られる。
インターネット調査のネオマーケティングが実施した『今どき“会社飲み”実態調査』(7月9日発表)によると、20代、30代の若手ビジネスパーソン300人のうち、50.4%の人が「会社の人と飲みに行くのは好きだ」と回答。また、「会社の人に飲みに誘われたら、ぜひ行きたい」と、酒席を心待ちにしている人も56%と過半数いたことが分かった。
今どきの若者といえば、「ドライで職場内の人間関係も淡泊」とのイメージで見られがちだが、決してそんなことはないようだ。会社飲みに積極的な若手社員が増えた背景について、ニッセイ基礎研究所の久我尚子さん(生活研究部の准主任研究員)が話す。
「アベノミクスで雇用環境は徐々に改善しているとはいえ、いまだに若者の就職活動は厳しいし、簡単に転職もできない時代。ならば、せっかく入った会社で人間関係をそつなく築きたいというのが本音です。日本生産性本部が毎年行っている新入社員調査でも、『学生時代の友人との飲み会よりも職場の裏情報が聞けそうな飲み会を優先する』と答えた人が64.3%もいました」
だが、これらの調査をもってして、若手社員なら誰でもとことん飲みに付き合ってくれ、上司の愚痴もおとなしく聞いてくれると思ったら大間違いだ。前述のネオマーケティングの調査には続きがある。飲みには行きたいが、“時短”が条件だというのだ。
●“会社飲み”はできるだけ短時間で済ませたい(73.6%)
●出来れば1次会で帰りたい(79.3%)
●駅に近いなど、さっと帰れる場所で飲みたい(89.7%)
●飲み代はできるだけ安く済ませたい(86.4%)
ニッセイ基礎研究所の久我さんは、コストパフォーマンス(コスパ)というキーワードを挙げて解説する。
「時短意識が結果に表れたのは、コスパを気にする若者文化の象徴といえます。何かモノを買うにしても、すぐにネットで調べて価格比較できたり、スペック比較ができたりする時代ですから。
ただ、コストといってもお金だけでなく、時間も含まれています。いくら上司や会社が飲み代を払ってくれても、長時間拘束されればコスパに合わない。職場のちょっとした噂話が聞け、周囲とは濃密にならない程度のコミュニケーションで顔を繋げれば十分なんです」
再びネオマーケティングの調査を見てみると、会社飲みは「会社の人と親しくなれる」(64.7%)や「仕事上でもコミュニケーションがとりやすくなる」(56.3%)など、全体の約9割が「何らかのメリットがある」(89%)と感じていた。
「25歳前後の『ゆとり世代』は、適度なコミュニケーションを求めながらも、周囲とは広くゆるくつながっていたいドライさも残しています。そもそも人付き合いや時間の使い方の価値観が昔とは違うので、高度成長期の飲みニケーションをイメージして深酒につき合わせるような上司は嫌われてしまいますよ」(久我さん)
会社飲みを通じて社員の結束力、ファミリー意識を高め、ひいては業績向上につなげたい――。こんな目的の飲みニケーション復権なら、かえって逆効果になる恐れもある。