多くのメディアに露出し、衆目を集めるプロスポーツ選手は、アスリートであると同時に絶大な訴求力を持つ格好の「広告媒体」でもある。中でもプロ野球は、人気低迷が叫ばれるとはいえ、下位球団でも1年を通して数万人以上の観客を集め続けられる競技だ。しかし球界では長く、ユニフォームへの出稿は認められなかった。それが変わったのが2000年のプロ野球実行委員会。大きさを限定して、特定の広告をつけることが可能になった。
「例えば阪神が上新電機と初めて契約を結んだのは2002年。2004年にはヘルメットとユニフォームの袖に広告をつけるようになった。契約金は2つ合わせて、年間3億5000万円だったといわれています」(在阪スポーツ紙記者)
しかし、解禁されたとはいえ、セ・パ両リーグの足並みは揃っていない。
「パはすべての試合で広告貼付がOKだが、セはホームゲームのみでビジターはNG。交流戦でパのチームがセの球場で戦う場合、広告のついていないユニフォームを着なくてはならないので、パの用具係はかなり神経を使う」(パ球団用具担当者)
ユニフォームにつけられる広告は、上下1点ずつに限られる。そのため興味深い現象が起きている。一度、選手のユニフォームをよく見てみてほしい。ユニフォームに「スポーツメーカーのロゴ」がある球団と、ない球団があるはずだ。
「実はメーカーのロゴ自体が“広告”扱いになる。ユニフォーム提供メーカーのロゴを入れるには、別に広告料が発生する」(前出・代理店関係者)
つまり、ユニフォームに提供メーカーのロゴが入っていれば、袖に広告は入れられないし、逆に袖に広告を入れれば、提供メーカーのロゴは入れられない。選手個人が契約できるのはグラブやバットといった用具の使用契約のみ。そのため、メーカーの担当者は目星をつけた選手に密着する。例えば、ヨネックスは高校時代からサポートしていた菊池雄星(西武)の入団時、宮崎・南郷のキャンプ地にも担当者を派遣していた。有名選手ともなると「パーツの奪い合い」になる。
「日ハム時代のダルビッシュ有はナイキと契約していたが、スパイクだけは別の国内メーカーのものを使っていた時期があった。そのため撮影時、ダル側から『足元が映らないようにしてほしい』という要望が出ていた。投手なのに下半身を切れというのかと、報道陣からブーイングが出ていた」(スポーツ紙記者)
※週刊ポスト2013年7月19・26日号