正直、脱帽しました。前号まで本誌『週刊ポスト』は3週連続でNHK朝ドラ『あまちゃん』の「ネタバレ」「展開予想」企画を続けてきた本誌だが、東京編に突入してからの展開は、それを大幅に上回ってきた。
ミス北鉄・足立ユイ(橋本愛)の母親(八木亜希子)が失踪することはわかっていた。しかし、まさかユイちゃん本人が『ファッションセンターしまむら』で買ったかのようなヤンキーファッションに身を包み、グレてしまうとは思わなかった……。
まだまだある。
「南部潜り」の魂を見せつけると東京で頑張っていたはずの種市先輩(福士蒼汰)が東京スカイツリーの工事に回され、「ずぶん(自分)、高所恐怖症なんです」とすぐに仕事を辞めてしまっていたという情けない新事実。しかも、東京版「スナック梨明日」になりそうな上野の「無頼鮨」で、寿司職人に弟子入りとは……。
極めつきは、海女クラブの美寿々さん(美保純)だ。こちらが「水口(松田龍平)を追いかけて東京にやってくる」「いや、震災復興ボランティアと交際する」と予想しているのをあざ笑うかのように、早々にバングラデシュ人(じぇ!)と付き合いはじめた……。
う~ん、宮藤官九郎、恐るべしである。
『あまちゃん』を観ていて驚くのは、ヒロインのアキ(能年玲奈)や春子(小泉今日子)、夏(宮本信子)といった主要人物だけでなく、脇役たちまで細かく描かれ、その個性を愛さずにいられなくなってくることだ。
アイドル評論家で『あまちゃん』研究の第一人者である中森明夫氏も絶賛する。
「宮藤さんの脚本は、脇役たちへの配慮がもの凄い。それは出番やセリフに現われています。たとえば太巻プロデューサーを演じる古田新太は演劇の聖地である下北沢に縁の深い人物。その彼に“GMT47は上野から攻めていく。下北なんか古い”といわせるのだからたまらない。
海女クラブの面々にしても、渡辺えりさんや木野花さんなど演劇出身の実力派や、“ロマンポルノの百恵ちゃん”といわれた美保さんの個性があるからこそ、アイドル女優である能年さんが引き立つわけです」
※週刊ポスト2013年7月19・26日号