プロ野球中継をテレビで見ていると、球場の各所に掲示されている広告が目に飛び込んでくる。手元に、ある球場が出稿を検討する企業・団体向けに作成した広告資料がある。そこには、“この場所は、テレビ画面ではこう映ります”という画像が添えられている。球場の広告で訴求力があるのは「テレビに映る場所」である。内外野フェンスはもちろん、意外なところでは、ベンチの中も人気が高い。
「野球中継ではよく監督の表情を映すでしょう。だから監督の“指定席”の後ろの壁は、人気があるんです」(広告代理店関係者)
また最近は、最新技術を使って効率良く広告費を稼ぐ試みも行なわれている。
「電子化されたバックスクリーンの活用です。イニングごとに表示する広告を変化させることで、同スペースで複数の広告主から料金が取ることができる。広告主も出稿費用が安くなるので、お互いにとってプラスになる」(球場関係者)
審査さえ通り、料金を払えばどんな広告でも出せる。変わり種としては、かつて南海が本拠地としていた大阪球場の外野に出ていた漫画『あぶさん』の広告(推定300万円)や、今年5月に話題になった横浜スタジアムの外野広告(*注)などがある。現在、12球団で「自前の球場」を持つのはソフトバンクだけ。そのためほとんどの場合、看板広告料は球場側と分配される。
一方、サッカー・Jリーグの場合、スタンドの向こう正面はJリーグの「オフィシャルスポンサー」の広告と決められているが、両ゴール周辺やベンチの上など、他は本拠地チームのスポンサーなどが掲示できる。
相場は「看板1枚で年間3000万円程度」(サッカー関係者)といわれている。しかしサッカーも野球と同様、親会社のヤマハ発動機がスタジアムを持つジュビロ磐田以外は、自治体や企業などに場所を借りているケースが多いため、収益がすべて球団に入るわけではない。
「野球に比べテレビ中継が少ないので広告料は安い。100万円単位の小口で募集して、なんとかスペースを埋めるという、涙ぐましい努力が行なわれています」
【*注】「キヨシさん! 勝って! HN」という広告。中畑清監督が「気が散る」と激怒したうえ、「HN」が亡くなった中畑夫人を連想させるとして、試合中は布で覆って隠された。広告主は非公開。費用は約1000万円と見られている。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号