元CIA(米中央情報局)局員だったエドワード・スノーデン氏がアメリカ政府による情報収集活動の一端を告白してというもの、多くの人が衝撃を受けている。だが、スノーデン氏の告白にいちいち驚くことはないと、大前研一氏は語る。
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NSA(米国家安全保障局)とFBI(米連邦捜査局)によるインターネットを通じた個人情報収集問題が世界中に波紋を広げている。
マイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブック、スカイプ、ユーチューブなどアメリカを代表するIT大手9社が、メールやサイトの検索・閲覧履歴などの情報収集を容認していたと、元CIA職員のエドワード・スノーデン氏が暴露したのである。
この問題は日本でも大々的に報じられたが、誤解を恐れずにいえば、何を今さらの感がある。なぜなら、アメリカ政府は昔からネットや電話を通じて個人情報を収集しているからだ。
たとえば、2000年にNTTコミュニケーションズがアメリカのISP(インターネットサービスプロバイダ)のベリオを買収しようとした時、FBIが米財務省に対し、盗聴や傍受に支障が生じるとの理由から「国家安全保障上の懸念」を表明した。
日本政府が自分たちと同じようにネット情報を収集することを危惧したのである。最終的にはNTTコミュニケーションズが、アメリカ政府とベリオとの関係には一切タッチしないという一筆を入れて買収は承認された。
今回、NSAのアレキサンダー長官は米下院の公聴会で、2001年の9.11同時多発テロ以降、情報収集活動により50件以上のテロを未然に防いだと証言したが、NTTコミュニケーションズの一件を見れば、9.11以前からアメリカ政府がネット情報を収集していたのは明らかなのである。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号