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山口組が機関誌発行 暴力団組長には仲間と写真展を開く人も 

 日本最大の暴力団山口組が、組の機関誌を作って配下の組に配っていることがさきごろ報道された。組長の訓示だけでなく、趣味など娯楽欄も充実しているようだ。フリーライター神田憲行氏が、「暴力団組長の趣味」について語る。

 * * *
 報道によるとこの機関誌は「山口組新報」といい、組の綱領や指針などの他に囲碁将棋や川柳、釣りなど娯楽欄まであるという。ネットではさっそく「読みたい」という声が溢れた。

 一般市民にとって暴力団員とはドラマやニュースなどでしか知ることがない。せいぜい歌舞伎町のような盛り場で遠目で「らしい人」を見かけるくらいだろうか。そんな人間に「趣味」という人間的な部分に興味をそそられるのも無理はない。私もそうだった。

 私が以前取材した組長は山口組ではない大きな組織の幹部をしていた。組事務所にある畳敷きの組長室(?)に案内されてまず驚いたのが、ずらりと並んだプラスチック製の書類ケースだった。しかも棚のひとつひとつに「××組関係」とか、印字したテープが丁寧に張ってある。テープの長さも位置も均等で、そうとう几帳面な性格の人だと思った。

 本筋の取材を終えて、余談で彼の趣味についての話になった。写真撮影が趣味ということで、菜の花畑の向こうに列車が走っているような、心が温まるような風景写真をたくさん見せてもらった。

「写真を撮っているときはひとりになれるだろ? そこがまたいいんだよ」

 彼クラスになると夜の街を歩くときは必ずボディカードが付く。だからたったひとりで菜の花畑にしゃがみ込んで、列車が走り込んでくるのを待っている時間が楽しいらしい。しかも写真を趣味にしている暴力団幹部は少なくないようで、なんと他の組の幹部連中と一緒に、写真のグループ展まで開催していた。もちろんひとりひとりの名前は仮名なのだが、パンプレットも作成していた。

「この写真が××組の若頭。これが○○組の組長で……」

 夕焼けに染まった湖面を今まさに飛び立とうとする白鳥の写真を「若頭」が撮ったと解説されて、人の世界の不思議さを思わずにはいられなかった。

 機関紙に娯楽コーナーがあったり、写真のグループ展やったり、コワモテの人たちの「お茶目な部分」を知ってホッとする……わけではないが、暴力的な人間の心まで癒す「文化の力」があることはわかった。

 ちなみに私が取材した組長の自慢は国民年金を受給していることだった。「ちゃんと毎月収めてたからね」と念を押された。

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