資産インフレの到来は私たちの資産形成の在り方を激変させる。その象徴が、不動産・マイホームの運用だろう。
「個人の金融資産で最も大きなものは不動産であり、『収益を生むマイホーム』です」──そう断言するのは、『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)の著者で、不動産マーケティング会社「アトラクターズ・ラボ」代表の沖有人氏。
柔軟に自宅を住み替えることができれば、「単身」「結婚して夫婦共稼ぎ(DINKS)」「夫婦と子供」「子供が独立した夫婦」「老後」と、ライフステージの変化に沿って、マイホームのサイズや住みやすさを変えていくことも可能になる。
沖氏は著書のタイトルの通り、「10年」での買い替えを目安にしている。それはなぜか。
「ライフサイクルを考えると10年がちょうどいい。例えば、子供が中学から大学卒業までで約10年。子供の進学や自立に合わせて住み替えるならそのスパンが適当です。何より、中古物件を買いたい人が築10年以内の築浅物件を希望する傾向が強いので、10年がいい区切りになるのです」(沖氏)
繰り返すが、買い替えを実現するためには、何よりも資産価値を高く保てる物件を厳選して購入することが重要になる。それで儲けを出せないと、次のマイホームにステップアップするための資金ができないからだ。
「必ずしも購入価格以上で売れなければいけないというわけではありません。購入時と売却時の差額を『中古騰落額』といいます。そのマイナス額が、その家に賃貸で住んだ場合の家賃総額よりも安ければ、その分が貯金=利益という形で手元に残っているはずです。住宅ローンの金利分を差し引いても、おつりが十分にあるのなら、“儲かった物件だった”といっていい」(沖氏)
では、将来の資産価値の高さが期待できる物件のポイントは何か。個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」の長嶋修・会長が解説する。
「まずカギを握るのは、何といっても立地です。立地条件が良ければ良いほど価値は落ちにくい。おおまかにその条件を挙げると、都心部、2つ以上の複数路線が利用可能、誰もが知っている地名・駅利用。それから駅へのアクセスが徒歩7分以内、などが好立地の目安になります」
※週刊ポスト2013年7月19・26日号