中国の李克強首相の筆頭秘書ともいえる総理弁公室主任に王仲偉・中国国務院(内閣)副秘書長が任命されていたことが分かった。李氏と王氏は同い年であり、同じ中国共産主義青年団(共青団)出身で、1980年代後半から1990年代にかけてともに活動しており、親しい関係だという。
しかし、王氏は主に上海を拠点にしており、李氏のライバルと目される習近平主席とも近く、上海閥の影響が強いことから、習氏が王氏をお目付役として、李氏の事務所に送りこんだとの観測も出ている。
王氏は1955年12月、浙江省で生まれたが、1976年から上海第5製薬工場の党委副書記を皮切りに、2009年11月まで、ずっと上海市で活動してきた。この間、共青団の上海市委員会での仕事が長く、李氏が北京の共青団本部で中央書記と全国青年聯合会副主席を務めていた際、王氏も上海の共青団委員会の副主席と上海市青年聯合会主席を兼務。李氏は王氏にとって直属の上司的存在で、2人は北京と上海で交流を続け、密接な関係を築いてきた。
その後、王氏は報道機関の管理部門に移り、上海市新聞出版局党委副書記や地元紙「上海文匯報」の党委書記兼副編集長、上海市副秘書長やスポークスマン的役割の新聞弁公室を務めるなど、上海市の幹部として着実に出世してきた。
この間、2007年には習氏が市トップの党委書記を務めており、「習氏は王氏に目をかけていた」と上海市幹部は語っている。そのためか、2009年11月には中央政府の国務院新聞弁公室副主任に抜擢され、習近平体制が発足してから間もない今年4月には国務院副秘書長に昇進した。「この裏には、習主席の強い引きがあった」と北京の政府関係者は明らかにしている。
しかし、それから2か月後の6月には、副秘書長のまま李克強弁公室主任を兼務する辞令が下ったのだ。「表向きは李氏が昔なじみの王氏を抜擢したことになっているが、王氏は上海閥の色が濃い。副秘書長の抜擢人事によって、習氏が王氏を李克強弁公室主任として送りこんだとの見方が強く、ネット上では王氏は『習主席のスパイ』との書き込みもあるくらいだ」と同関係者は指摘する。