結婚のハードルが高くなれば、少子化が進むのは必然だ。
安倍政権が少子化対策の目玉として打ち出したのは、女性手帳と育児休業制度の改正だった。女性手帳は、晩婚化や晩産化が進むなか、若い女性向けに妊娠・出産についての知識を広めるのが目的だったが、女性の間から「女性だけに配布するのはおかしい」といった反発が起こり、配布は見送りとなった。
かたや育休制度は、具体策がどんどん固まりつつある。「男女ともに子供が3歳になるまで子育てに専念できるよう、『3年育休』の導入を企業に促す」のが柱で、育休から復帰した後も仕事と子育ての両立ができるよう、長時間勤務の削減や短時間勤務の選択肢、育児休業を取りやすくするなどの環境整備を企業に求めていくという。
「男女ともに」とあるが、「育児休暇を3年に延ばして、お母さんは子供を抱っこし放題抱っこして、それから復帰すれば」と語ったように、安倍首相が育児休業を「女性のもの」と想定しているのは明らかだ。
本来、子育ては男女ともにするもののはずだろう。単に育休期間を延ばすだけでは、女性をかえって家庭にしばりつける結果になる。一方、男性が育休を取ることに関する無理解はいまだ解消されていない。
かつて大手企業に勤務し、育休制度を利用した40歳の財務コンサルタントが苦い経験を語る。
「長男が生まれた時、妻が病気をしていたこともあって、育休を申請しました。男性ではあまり例がないということで、最初は『それは無理だ』といわれました。
その後も、『君が育休をとっても増員はしない。今いる人間だけで仕事をこなす』と、暗に“人に迷惑をかけるな”と圧力をかけられたり、『もう出世は望めないぞ』と脅されたり散々な目に遭いました。時間をかけて話し合いをしてやっと認められたという感じです。法的に認められているからって、現実はそうはいきませんよ」
※週刊ポスト2013年7月19・26日号