多くのメディアに露出し、衆目を集めるプロスポーツ選手は、アスリートであると同時に絶大な訴求力を持つ格好の「広告媒体」でもある。選手個人が契約できるのがグラブやバットなどの用具に限られる野球に比べるとサッカーは広告に寛容なスポーツである。
Jリーグのユニフォームは右胸にメーカーのロゴのほか胸や背中、袖や腰など、様々な場所に商品や社名のロゴをつけてプレーしている。広告との調和性が高い理由は、日本サッカーがかなり古い段階で「スポンサー契約」の重要性を学んだからといわれる。きっかけは「神様」ペレだった。
1984年8月の釜本邦茂の引退試合。釜本に敬意を表して来日したペレが、当時のヤンマーの赤いユニフォーム・背番号10を着ることになった。
「ペレは当時、プーマの顔としてCMに出るなど世界を駆け回っていた。ところが、ヤンマーのユニフォームはアディダス製だからペレは着用できない。そのためこの試合ではペレのユニフォームだけ3本線が入っていなかった。これを見た関係者が、スポーツにおける広告契約とは何たるかを学んだといわれています」(サッカー協会関係者)
個人に目を転じれば、サッカーで選手が個人契約できるのはスパイクだけ。今回のW杯最終予選を前に、日本のエース・本田圭佑がスパイクをミズノと共同開発したというニュースが大きく報じられた。これに切歯扼腕したのがアディダスだった。
「アディダスは2007年から8年契約、160億円を投じて日本代表の公式サプライヤーになっています。ところが前回の南ア大会では無回転フリーキック、今回の予選でもPKと、露出したのは“本田の足”ばかり。おいしいところをミズノに持って行かれた形です。ミズノは共同開発に数千万円をかけたといいますが、アピール度もケタ違いでした。ミズノの計算勝ちでしたね」(サッカー誌記者)
選手の真剣勝負同様、グラウンドではスポンサーたちの争いも繰り広げられているのである。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号