ロコモティブシンドロームとは、全身の筋肉や関節、骨など運動器の障害で、車いすや寝たきりなど要介護になるリスクの高い状態をいう。
日本整形外科学会が2007年から提唱しているが、高齢者の病気というイメージがあり、世の中に広く浸透しているとはいえない。しかし運動器の衰えは女性では40代から、男性も50歳を超えると多くの人に見られる。実際には衰えに気づいていない人が少なくないため、若い世代にも運動器を意識してもらおうと、手軽にできるロコモ度テストが開発された。
名戸ヶ谷病院(千葉県柏市)整形外科の大江隆史院長に話を聞いた。
「ロコモ度テストは、脚力を調べる立ち上がりテスト、歩幅から歩行速度を見る2ステップテスト、身体の状況を調べるロコモ25の3つからなっています。どれか1つでいいので、トライして数値を出し、同年代の平均数値と比べます。平均数値より低ければ、将来のロコモリスクが高いということになります」
立ち上がりテストは、高さ20、30、40センチメートルの各台に座り片脚(70代以上は両脚)で立ち上がれるかをみる。男性の20代では片脚で20センチメートル、30代は30センチメートル、40~60代は40センチメートルの台から片脚で立てないと、自分の体重に対して脚の筋力が足りないことを表わす。
2ステップテストは、スタートラインを決め、そこからできるだけ大股で2歩進み最後に両脚を揃えて立つ。このときバランスが崩れたり、脚を揃えて立てなかったら、最初からやり直す。2歩分の歩幅を身長で割って2ステップ値を計算する。
40代では1.5を超えないと歩幅が狭いことになる。実は歩幅は歩行速度に影響を与える。歩行速度は1分間にどれだけ進めるかの数値で、歩幅に歩数をかけて求める。歩行速度は歩数の減少ではなく、歩幅が狭くなることで低下する。
「歩行速度は人間の運動器の健康と深く関係しています。人間の脚力、バランス力、柔軟性と関連しているだけでなく、最近の研究で歩行速度が速い人は寿命が長いという報告もあります。歩行速度を計るのは大変なので、このテストでは歩幅を計ることで対応しているわけです」(大江院長)
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年7月19・26日号